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醜い女
3部分:第三章
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第三章

「あなたはお父さんとお母さんに言って」
「お義父さんとお義母さんに?」
「ええ」
 今二人は家の二階の二人の寝室にいる。芳香の両親であり信和の義理の父親と母親であるその二人は一階の彼等の寝室にいるのだ。
「言っておいて。私達でやるからって」
「僕達でやるんだ」
「安心していていいってね」
 芳香は強い声でこうまで言う。
「言ってて。私その間に警察に連絡するから」
「わかったよ。それじゃあね」
「それが終わったら玄関御願いできるかしら」
 芳香は続いて夫にこう言った。
「それが終わってからね」
「玄関だね」
「ただ。注意してね」
 妻の声が鋭くなった。
「相手は本当のキチガイだから」
「キチガイなんだ」
「河北商事のあいつでしょ」
 上司と、彼女の知っている彼と同じ会社の名前がここで出た。
「部長さんからも言われてるわよね」
「うん、聞いた話だとね」
「あいつなら何をやってもおかしくないわ」
 声はさらに鋭いものになっていく。まるで刀の様に。
「だから。気をつけてね」
「銃とかナイフとか持って来てるかも知れないの?」
「それか包丁か」
 どちらにしろ物騒な代物が話に出る。
「持っていてもおかしくないから」
「それでブスッとかズギューンと」
「なりたくないでしょ」
「それはね。誰だってそうだよ」
 この問いにはもうこれしか答えはなかった。
「そんな。撃たれるのも刺されるのも嫌だよ」
「じゃあ用心して玄関頼むわ」
「うん」
「後で私も行くから」
 彼は妻の言葉に頷くととりあえず一階の義理の両親に話をしてそれからパジャマからジャージにすぐに着替え腹のところに漫画の雑誌を三冊程度入れてそれを守りにした。そのうえで右手にそっとこれまた用心に買っておいた特殊警棒を忍ばせ左のポケットにはスタンガンを入れた。こうして万全の用意をしたうえで玄関に出るのだった。
 玄関からは相変わらずあの不気味な泣き声が聞こえてくる。そこの灯りを点けた上で扉を開けると。やはりそこにあの女がいるのだった。
「忘れたとは言わせないわよ」
 いきなりその鋭い目で彼を見据えつつ言ってきた。
「もうね。忘れたとは」
「あの電車のことか?」
「違うわ」
 何とそうではないというのだ。
「皆さん」
「皆さん!?」
 ここで女が妙なことを言ったのに気付いた。
「皆さんって何だ?」
「この男です」
 見れば灯りに照らされて女の周りには多くの人達がいた。皆近所の人達だ。どうやら女の泣き声を耳にして集まってきたらしい。
「この男が私を弄んだんです」
「えっ、何を言ってるんだ」
 これは彼にとって予想外の展開だった。
「弄んだって僕が」
「それがこの証拠です」
 言いながら出してきたのは何と女
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