暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十九話 辺境星域
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


帝国暦488年  5月 24日  オーディン  ブラウンシュバイク公爵邸  ジークフリード・キルヒアイス



「ラインハルト、ブラウンシュバイク公とは良い関係を維持してね」
「勿論です、姉上。公が私の事を色々と気遣ってくれている事は分かっています。それを無にするような事はしません」
嘘ではない。ラインハルト様は皇帝になるという野心を封じた。アンネローゼ様を奪ったフリードリヒ四世を許したわけではない。だが皇帝が暗愚ではなく酷く不幸な人だという事は理解している。そして皇帝がアンネローゼ様を、そしてラインハルト様の将来を案じている事も……。単純に憎める相手ではなくなっている。

「なら良いけど。……ブラウンシュバイク公は、……不思議な人だわ」
少し言い淀んだ。不思議とは如何いう事だろう、ラインハルト様も訝しそうな顔をしている。
「貴方達と色々と拘わりの有る方だからずっと見てきたけど私は公がとても不思議な人だと思うの」
また不思議と仰られた。

「アンネローゼ様、不思議とは一体……」
アンネローゼ様が私を見てちょっと困った様な表情をされた。
「最初は有能な軍人だと思っていたの。でも違ったわ、ブラウンシュバイク公になられてから不思議な人だと思ったの」
アンネローゼ様が仰りたいのは不思議なほど運が良いという事だろうか?

「姉上の仰りたい事は運が良いという事ですか?」
「いいえ、そうじゃないの」
アンネローゼ様がもどかしそうに首を横に振った。運では無い?
「それも有るかもしれないけど……。自然なのよ、自然にブラウンシュバイク公を、宮中の重臣という役割を果たしている。普通なら戸惑いや失敗が有る筈なのにそれが無いわ。違和感が無いの」
なるほど、と思った。ラインハルト様も頷いている。確かに違和感が無い。もう十年もブラウンシュバイク公をやっていると言われても不思議には思わないだろう。

「元帥、宇宙艦隊司令長官も普通にこなしている。そして今は国政の改革も……。自然なのよ、全てが……」
「……」
「未だ若いのだから気負いや覇気が有ってもおかしくはないのだけれど……」
「アンネローゼ様にはそれが見えないのですね?」
「ええ」
アンネローゼ様が頷いた。

「不思議でしょう?」
ラインハルト様が“言われてみればそうですね”と頷いた。
「何と言うか、その時その時に必要とされる役割を演じているように見えるの。だから誰も不思議に思わない、自然と受け入れている……」
ラインハルト様が私を見た。問い掛けるような目だ。ラインハルト様も何かを感じている。

「傍に居てはその不思議に気付かないと思うの。だから注意してね」
「注意ですか?」
「気付いた時には愕然とした、そんな事が無いようにして欲しいの。そして公の傍に居
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ