暁 〜小説投稿サイト〜
妖精の守護者 〜the Guardian of fairy〜
妖精剣
[1/6]

[8]前話 [1] 最後
「ゼスー! ちゃんと特訓するって言ってたじゃない〜!」

「ほぁ?」

 あれから血の滲むような特訓(二十四時間フィッシング)をしている俺の背後から、誰かの叫び声が聞こえた。既に二日間、魚しか食べていない俺の目は、虚ろで、誰の声かも定かではない。
嘘、シャルの声だ。あいつは、普段ほわほわしているため、声だけで判断できる。

「シャルよ。よく聞け、お前のような優秀な魔法使いにはわからんだろうが、今更何をやろうが、勝負は四日後だ。この四日間で何ができる? 奇跡でも起こらなければ勝つことなんてできるか」

「一昨日と言っていることが全く違うじゃない……」

「臨機応変に対応できないと、この世界で生きていくことなどできないぞ。お前みたいに、時間の流れが人よりも遅い奴は、特に注意が必要だ」

「ふーんだ。失礼な人には、これ見せてあげないんだからねー」

 シャルは少しすねた様子で、何やら大きな布を後ろへ隠した。
 これといって興味もなかったので、俺はそのままシャルを無視して釣りを再開することにした。

「ちょっと……ゼスが用意しろって言ったんじゃない〜!」

「痛い、痛い……顔面から押し付けるな……って、うお……これ、刃物じゃねぇか」

 それは、立派な装飾の付いた、何やら高価なそうな剣だった。ハゲの親父に売りつければ数万はくだらないと踏んだ。
 ゴーレムである俺には、金銭を持つ権利はないため、何かを買うこともできない。よくよく考えれば、幼児でもできることを俺はできないということだ。
 初めてのお使いもしたことがない。ツケも効かない。主人は恐ろしいほどの守銭奴。
 なんだか俺は自分自身が不憫に思えてきた。

「これはね、マーテル母さんのゴーレムが扱っていたとっても凄い剣なのよ? 母さんのゴーレムは」

「よし、シャル。それを俺にくれ」

 鼻くそも興味のない話を切り出す前に、俺は左手をシャルの顔面に突き出した。

「……ゼス、何か変なこと考えてない?」

「何を言っている。誰かを疑うような子に育てた覚えはないぞ」

「悪いけど、ゼスは見ていたら、誰も信じられなくなるわよ?」

 シャルは俺から距離を保ちつつ、半眼でじっと睨んできた。
 ひどい扱いだ。まさか俺がそれを売り払って、新しい釣り道具を買うとでも思っているのだろうか? そんなことをすれば、ただでは済まない。リーゼはもちろん、シャルだってキレるに決まっている。どんな恐ろしい結末が待ち受けているか……考えただけでも背筋が凍るようだ。

「ゼス、これを与える代わりに約束して欲しいの。リーゼと、リーゼロッテとずっと一緒にいてあげて? あの子は強い魔力の持ち主だし、いじっぱりで口は悪いけど、とても泣虫なの。誰かがずっと傍にいてあげなければ
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ