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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第七話 誓い
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 眼下のラグドリアン湖が反射する朝日に目を細める。微かに揺らめく湖面は青く、反射する陽光は白い……筈なのだが、どうもその全てが黄色く見える。背伸びをすると、腰の辺りにずしりと凝りを感じ、それを手の甲で軽く叩くことで解す。目を細めたまま、肩越しに後ろを振り向く。視線の先には、不自然に離れた二台の馬車があるが、その内の一つに視線を送った。幌で覆われた荷台の奥には、三人の女性が疲れ果てて眠っていることだろう。
 振り返り、再度ラグドリアン湖を見下ろすと、顎を撫で……ポツリと呟く。

「やりすぎたか?」

 

 昇りきった太陽は、世界を照らし出していく。
 
 湖を、草原を、馬車を……そして……馬車から離れた位置に転がる――――

 ――――ロープに縛られた―――――

 ―――――ギーシュを――――


 




「あ〜……その、そんな目で見ないでくれないかモンモランシー」 
「……どんな目ですか」
「その……獣を見るような目だ」
「……別にしてません」
「そう……か」
「そうです」

 麗らかな昼下がり、二台の馬車は並んで草原を進んでいた。御者台に座り、手綱を握るのは、浅黒い肌と灰色の髪色が特徴的な男と、長い金色の巻き毛が特徴的な少女。ガラガラと、車輪が回る音が響く中、金髪の少女、モンモランシーは、並んで馬車の手綱を握る男を蔑んだ目で睨みつけている。その事について、士郎はどうしても文句は言えない。
 チラリと横目でモンモランシーを見ると、完全に変態を見るような目の下には隈が、そして頬は微かに赤らんでいるのが確認できる。
 女の敵を見るような目つき、目の下の隈、赤らんだ頬、そこから考えられる答えは……。

「……聞こえてたか」
「っひゃっ! わっ、わ、わ、わ」

 ポツリと小さく呟くと、隣りの馬車が大きく道を外れる。
 道脇に車輪が出てしまい、大きな音を立てる。モンモランシーは慌てて手綱を操り、どうにか馬車を道に戻すことに成功する。聞かれていたなと、確信を抱きながら、その様子を見ていると、モンモランシーが泡を食った様子で突っかかってきた。

「なっ! ななん、ななっ何が聞こえていたって言うのよ!」
「……いや、何でもない」

 この様子では、どう見ても彼女は、昨日の夜、馬車の荷台で行われたことに気付いているようだ。御者台から身を乗り出し、今にも転がり落ちそうなモンモランシーに向かって手を振って応える。
 息を荒げながら前に向き直るも、モンモランシーの顔は今にも火を吹きそうなほど、真っ赤に染まったままだ。そして、顔を前に戻した士郎の浅黒い頬も微かに赤らんでいた。









「最近、大雨でも降ったのか?」
「? そんな話しは聞いたことないわよ。どうした
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