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101番目の舶ィ語
第八話。『星座の女神』
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当ならこんな心配はいらないなんていうことは知ってるが。
でも、やっぱり気になっちまうんだよな。
こういう子も、ちゃんと楽しい日常を過ごせるようになればいい。
そんな風に思ってしまう。

「お兄さん?」

「っと、悪い。考え事をしていた」

「ううん。わたしのことまで考えるなんて。お兄さんはやっぱりスケコマシさんだね」

「うぐっ」

一之江に言われた『ハーレム野郎』という言葉を思い出す。
俺はハーレム野郎なのか……。
いや、違う。ただの誤解だ。
女を避けてる俺がハーレム野郎なはずはない。絶対。うん。

「それでね。十字路……『四辻』では、良くないものと出会う。そんな都市伝説が実はあったりしてね?」

「ん? 良くないもの?」

「そう。だからこの先に進めば、お兄さんはこれから『主人公』として、とても大変なことになるの」

「『主人公』として……?」

胸の鼓動が高まる。それは今正に俺が悩んでいるものだからだ。

「その結果、もしかしたら望まない方向に向かうかもしれないし、望んでも苦しいことになるかもしれない。今なら、ここを戻ればそういう苦しい思いをしなくても済むけど。どうする?」

このまま進めば、望む望まないに限らず、苦しい道になるかもしれない、か。
そして、ここから早急に立ち去れば。先輩の家にでも戻れば。
きっと朝が来て、ドキドキ、デレデレして怒られる……という。
当たり前な日常を過ごせるのだろう。
迷うことなんかねえ!
当たり前な日常を選ぶべきだ。
俺が一番望んでいるのはそれだろ?

そう思っているのに。


「進んだ先に……俺が望んだものはあるのか?」

そんな質問をしてしまう。
俺の質問に対し、ヤシロちゃんは少しもったいぶるかのように歩いてから。
くるっと体を向けて。

「苦しくても、進めば何かはあるよ」

ただ一言、そう告げた。

「……戻ると何もないってことか」

進むか、戻るか。
その二択しかないのなら……
俺が出す答えは決まっている。

「ありがとう、ヤシロちゃん。やっぱり俺は先に進むよ。苦しくても、自分に何が出来るのか探してみるよ」

その『何か』も、探してみなければずっと見つからないままだしな。
たとえ苦しくても進まなければ、何も手に入らない。
それに俺は東池袋高で学んだ。
『力を持つ者には正しく力を使う責任がある』ということを。

「そう、やっぱり進むんだね。そんなお兄さんに、朗報なんだけど」

「朗報?」

「うん。この先に進めば、お兄さんはみんなを守れるようになるかもしれない」

みんなを守れるように?

「それは……」

どういう意味だ、と聞こうとしたところで。

「もっとも、
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