暁 〜小説投稿サイト〜
古城
4部分:第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第四章

「それで生きていたのです。その結果彼は人ではなくなりました」
「食べたことにより」
「そうです。そして」
 さらに話を続ける。
「彼はそこで姿を消しました。先祖に恨みの言葉を残した後で」
「それで話は終わりでしょうか」
「残念ですが。続きがあるのです」
 語るその顔が強張っていた。そのことからこの話がさらにおぞましいものになるのがわかった。語るスタンフィールド卿も恐ろしいものを感じているのがわかる。
「その続きは」
「毎年。そう」
 スタンフィールド卿はさらに語る。
「この時期になると夜な夜な城に出て中を徘徊すると言われています」
「この城の中をですか」
「はい、そうです」
 オズワルド卿の言葉に答える。
「おそらく今日もまた。ですから」
「この城にいては危ないと」
「そこまでは申しません」
 今のオズワルド卿の言葉は否定されるのだった。
「少年は部屋の中までは入って来ません。それに姿を現わすというのは真夜中だけです」
「真夜中ですか」
「真夜中に何処からともなく姿を現わし」
 また語る。
「夜明けと共に姿を消すと言われています。ですから見た者はいないのです」
「左様で」
「この時期はあえて使用人達も夜休ませていますし」
 これは気遣いと心配りであろう。
「見た者はこの数百年いないのです」
「ですが。いるのは間違いないのですね」
「それはまず間違いなく」
 スタンフィールド卿もそれを否定しないのだった。それも一切。
「います。これは少年が姿を消して間もない頃ですが」
「その事件があってすぐに」
「当時の先祖の一人が真夜中に城に戻りました」
 何かしらの仕事をしたのだろうか。どちらにしろ真夜中に城に戻るということがそもそも尋常ではないことだがそれはあえて言葉に出さないのだった。
「その時に少年に会い」
「どうなりました?」
「それが。わからないのです」
 スタンフィールド卿はここでこう言って首を横に振るのだった。
「わからないと申しますと」
「その先祖は生きてはいました」
 それは保障するのだった。
「幸いと言うべきかそれは無事でした。しかし」
「しかし」
「その夜のことを何も語ろうとしないのです。髪も真っ白になってしまい」
「何も語らないと」
「そうです。何も」
 それをまた言う。
「生涯そのことに対して沈黙を守ったままでした」
「左様ですか」
「ですから何もわからないのです」
 そういうことだった。
「彼が一体何を見たのかも。こういうことです」
「わかりました」
「それで一泊されるのですね」
「はい」
 最初からその予定で話をしている。だからこれは言うまでもなかった。
「そういうことで御願いします」
「わかりました。それではで
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ