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旱魃
2部分:第二章
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第二章

「ここが私の家です」
「ここがだな」
「そうです」
 そう馬の後ろから左衛門に告げてきた。
「そうか、ここであったか」
「はい、有り難うございます」
 家の前まで来たところで左衛門に礼を述べてきた。
「おかげで助かりました」
「何、礼には及ばん」
 彼は笑って娘の言葉に応えた。
「武士として当然のことをしたまでじゃ」
「武士ですか」
「そうじゃ、わしは武士じゃ」
 これは彼の誇りでもあった。
「だからじゃ。気にすることはないぞ」
「いえ、そういうわけにはいきませぬ」
 ところが。娘はその彼にこう言ってきたのであった。
「御礼は返さないといけないものです」
「どうしてもか」
「はい」
 娘はあくまで引かない調子であった。左衛門もそれを見て応えるのであった。
「是非共」
「ふむ」
 彼もまたそれを受けるつもりであった。そうして言葉を返すのであった。
「わかった」
「宜しいのですね」
「うむ。申し出も受けるのもまた礼儀」
 彼はここでは娘の願いを聞き入れることにしたのだった。それは好意を退けるのもどうかと思ったからである。
「だからこそな」
「有り難うございます。それでは」
 こうして彼は娘の家に入った。それから馳走を受け床を共にした。彼にとっては実に有り難い礼であった。礼を受けて満足して一夜を迎えたのであった。
 朝になった。朝日が目に入る。彼はそれを受けて目覚めるのであった。
「むっ!?」
 目が覚めるとそこには誰もいない。娘の姿は何処にもなかった。
「これは一体!?」
 しかもそれだけではなかった。何と彼の周りには家も何もなかった。あるのは墓石と卒塔婆だけであった。そこは墓地であったのだ。
「あやかしだというのか・・・・・・」
 彼はすぐにそう考えた。ばかされたのだと。そう考えるのが当然であった。何しろ床も今では草になっている。彼は草の上に寝て朝露で濡れていたからだ。
 その濡れた服をそのままにしてとりあえずは起き上がった。まずは仕事の為に将軍の御所に向かうのであった。馬もまた墓場の前で寝ていた。見たところ馬には何もなくそれは安心した。
 御所に入ると。同僚達が驚いた顔で彼を見てきた。
「生きていたのか」
「無事であったか」
「無事だと」
 驚く彼等の顔を見て問い返す。何かがおかしいとさらに思うのだった。
「どうしたのじゃ。昨日会ったばかりではないか」
「昨日!?馬鹿を言え」
 それはすぐに同僚の一人に否定された。
「三日も姿を見せなかったではないか」
「三日もだと」
「左様」
 その同僚は彼に応えてまた言う。
「三日も行方知れずで」
「上様も心配しておられたぞ」
「わしは三日も行方知れずであったのか」
「うむ。何処にいたのじゃ?」

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