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女人画
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第一章

                   女人画
 大島潤一郎は日本だけでなく世界でもその名を知られたかなり有名な画家である。風景画や花でも有名だがその中でもとりわけ美人画で有名である。
 とにかく幼女から少し年輩の女性まで描かせれば素晴らしいものを描く。その為彼に是非自分の絵を描いてもらいたいという女性は後を絶たなかった。
 彼もまたそれを拒むことはなく絵を次々と描いていった。だがここで一つおかしなことが起こっていたのであった。
「ほう、女性が消えたのですか」
「はい、そうです」
 とある場所でこんな話が為されていた。
「おかしなことにです」
「失踪事件というわけですね」
 簡単に言えばそういうことであった。
「つまりは」
「そうですね。ただし普通の失踪事件ではありません」
 それはすぐに否定されたのだった。窓から差し込む白とそれ以外の黒が対象になっているそのコントラストの部屋の中で。二人の男が向かい合ってその話をしていた。
「何人もなのです」
「何人もですか」
「数はそろそろ三桁に達します」
 こうした数字も話に出された。
「長年に渡ってですから」
「三桁とは尋常ではありませんね」
 話を聞く男は言葉には感情を出さずに述べたのだった。
「よくもまあ問題にならなかったものです」
「だからこそ私はここに来ているのです」
 語る男はこう彼に言葉を返してきた。
「ですから」
「ああ、そういうことですか」
「はい」
 彼に対して答えたのだった。
「その通りです」
「それでは。依頼は」
「調べて頂きたいのです」
 白と黒の中で言葉が慎重なものになった。話す男の眼鏡の縁が窓からの光を受けて白く輝く。話す途中身振り手振りの為しきりに動かしている指は黒である。
「ある画家について」
「画家といいますと」
「大島潤一郎です」
 ここでこの名前が出されたのだった。
「彼です」
「大島潤一郎!?」
 名前を聞いた方は思わずその名前を驚いたような声で言った。
「大島潤一郎というと」
「御存知ですね」
「知らない者はいないと思いますが」
 声が怪訝なものになっていた。その顔は光の対比のせいで見えなくなってしまっていたが表情は声からはっきりと窺うことができた。
「彼がですか」
「実はですね」
「ええ」
「あの人が美人画で有名なのは御存知ですね」
「それもかなりですね」
「そうです」
 このことが確認されたのであった。
「何しろとりわけそれで有名になっている人ですから」
「そうですね。絵心のない僕が知っている位ですから」
 名前を聞いた方もこう言う程であった。
「そのことは」
「それでです」
「それでですか」
「そうです。確かに美人画を多く描いてきています」
「は
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