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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
注意事項+プロローグ
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【プロローグ】


 ―――あいつってホント(どん)くさいよな。

 大概、そう言われる。
 そして続けて、こうも言われる。

 ―――剣どころか武器もまともに扱えないもんな

 ―――(たて)にしかならねぇよ。

 ―――(ちげ)ェよ、何もないところで転ぶとか壁にもならねぇって。

 ―――そりゃ足手まとい同然(どうぜん)の奴に払う(ドゥエ)なんかないわな。

 ―――いくら傭兵でも雇い主にそんな覚え方されたらオシマイだよなぁ。


『ハハハハハハッ』


 陰口(かげぐち)にもならない声で散々そんな事を言われた。
 否定しきれないほどに、それは事実だった。

 そこまで言わなくていいじゃないか、と思う。 思いたい。
 しかし、本当に雇い主から「もう帰れ」とか言われたらどうしようもなかった。
 戦場というのはどこでも起きるというわけでもないから、雇ってもらえなければそこではもうやっていけない。
 どんなに涙を飲んでも、(ドゥエ)が得られなければ何にもならない……それが傭兵(ようへい)という根無し草な職業だ。

 また、雇い先を探さないといけない。

 傭兵というのは、雇い主がいなければ無職(プーたろう)も同然。
 傭兵団であれば長期契約とかで、東から西へと宛のある戦場へと行くのだろうけど、ぼっちな傭兵はそうもいかない。

 切実な問題として…金欠が付き(まと)う。 懐が寂しい。
 (ドゥエ)がない。 (ドゥエ)がないのだ。

 だから彼は、傭兵として身銭を稼ぐために次の戦場に探すしかない。
 たとえ役立たずで、(どん)くさくて、足手まといで、おまけにドジであっても、だ。

 傭兵を辞めて普通の職に就けばいいだろう、と思うだろう。
 しかしそう言われても、仕事なんてそう簡単に見つかるものでもない。
 よしんば何かの職に就こうとしても、大抵は拝み倒してようやく低い賃金で雇ってくれるのがせいぜいである。
 それで生きていくのは辛い。

 それに…彼は傭兵である事を諦めたわけではない。
 ちっぽけな意地ではあるけど、使えない傭兵な彼でもその生き方を辞めるには割り切れないのだ。

 されど幸か不幸か? やっぱり不幸かな。

 それはとある山中の森の出来事―――彼の意識は視界がグルッと一回転してブラックアウトした。

 何をどうして、なんでそうなったか?
 それは彼自身、軽く記憶が吹っ飛んでいて思い出せなかった。

 ただ…わかる事はただ一つ、首から上が吹っ飛んでしまいそうな衝撃――可愛らしい雄叫びと共に――を受けたという事である。


 生き方を曲げない傭兵が、意識が暗転する頭の中で思った事は―――
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