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雲は遠くて
92章 落合裕子と妹、幸来(さら)との団欒(だんらん)
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92章 落合裕子と妹、幸来(さら)との団欒(だんらん)

 9月20日の日曜日の午前9時を過ぎたころ。外は青空の広がる秋晴れである。

 落合裕子の家は、小田急電鉄、代々木上原駅から歩いて3分の、
閑静な住宅街にある。敷地面積は、ほぼ60坪であった。
二階建ての家の前の駐車場には、車を3台置けた。

 今年の1月から、裕子は、信也たちのロックバンド、クラッシュ・ビートで、
キーボードを担当するようになっている。

 裕子は、その美しい容姿と、ピアニストとしての才能で、
テレビやラジオの出演も数多くあり、人びとにも広く知られていた。

 父親の裕也と母親の心奏(ここな)は、二人とも、俳優や声優をする芸能人である。

 裕也の父親の裕太郎も俳優や声優をしていたが、
現在は芸能プロダクション・トップの代表取締役をしている。

 裕子も、妹の幸来(さら)も、両親も、裕太郎の芸能プロダクション・トップに所属していた。

 裕子は、1993年3月7日生まれ、22歳。
幸来(さら)は、1994年7月14日生まれ、21歳。

(ゆう)ちゃん、その後、(しん)ちゃんとは、どんな感じなの?」

 妹の幸来(さら)が、裕子に、リビングでお茶をしながら、そう聞いた。
肩にかかる長い髪の幸来(さら)の笑顔には、大人っぽい落ち着いたお色気もあった。

全然(ぜんぜん)!」

「全然って?全然うまくいってないの?それとも、全然うまくいっているの?どっち?!」

「ぁはは。全然、うまくいってないほうなのよ。ぁはは!」

「そうなの、(ゆう)ちゃん、可哀想(かわいそう)
こんなに、しんちゃんのこと想っているのにね」

「しょうがないわよね。しんちゃには、
大沢詩織ちゃんという素敵(すてき)な女性がいるんですもの」

「彼女がいる人を好きになるのって、(つら)いよね。片思いなんだもん。
わたしも経験あるけれど。わたしの場合、そんな辛い片思いしてからは、
決して、自分から安易(あんい)に、男に()れるなんてことは、
しなくなってしまったわ。そしたらね、なぜか、あの手この手を使って、
男の方から近づいてくるんだもの!近ごろでは、モテ過ぎて、困っているのよ、お姉さん!」

「あらあら、それはそれは、幸来(さら)ちゃん。ごちそうさま。ぁっははは。
でも、そんなものよね。わたしだって、しんちゃんに夢中になってしまったものだから、
他の男性には目もくれず状態なんだけど、そしたら、急に、以前にも()して、
裕ちゃん、裕ちゃんって、あのさ、今度食事い行こうよなんて言って、
男の人が近づいてくるんだから!幸来(さら)ちゃん!」

「それだったら、お姉ちゃん、辛い片思いなんか、()
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