暁 〜小説投稿サイト〜
少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第三話:違和感の二乗
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 
 一面真っ暗に閉ざされた視界の中、しつこく見渡していた俺の眼へと、微かに光の筋が届く。そこへ向けて泳ぐ要領で手足を動かせば、徐々に徐々に進んで行けた。

 そしてその光に突っ込んで行き――――




「……! ここは……」


 羽の様に軽かった体が、錘でも乗っかってきたか行き成り重くなったかと思うと、目の前に綺麗な青空が広がった。

 何があったのかと俺は数秒ほど思考して、すぐにその原因を思い出す。


「そうだ、突然痛みを感じて……その激痛で俺は……」


 ぎっくり腰が持病である父親でもないのに、というより目立った負傷など無い体だと言うのに、どうして体を痛みが突き抜けて行ったのだろうか。

 トンと思い当たる節が無い。


 ふと思い返してみれば、アレだけの激痛にもかかわらず 「死ぬ」 などとは思わなかったし、体も別段支障なく動く。いっそ笑えるぐらいにだ。

 気になって考え始めてしまう俺だが、しかし思い当たる節など存在しないのに、原因に思い当たる筈もない。


 なら、あれはいったい何だった?
 

「チッ……人騒がせな……」


 兎も角一度振り払うと、次に思うことは……気絶してから、どれだけ時が立ったのだろうか、とっいったありふれた事柄だった。


 余り境内に時間を掛け過ぎると、家族みんなで食事がモットーな父親に鉄拳をくらう。束縛したいのか愛を注ぎたいのか分からない所業だが、一日の初っ端から痛い思いをしたのだし、すぐに二度目をくらうのは勘弁願いたい。


 もちろん、間が開けば是非喰らいたい訳ではないが。
 俺はサディストではないがマゾヒストでもない、だが中間と言うのも怪しい人間だ。


 腕に巻いた時計を見れば、気絶してから三分しか経っておらず、絵馬も全て燃やしてしまい境内の掃除も終えたので、あとやるべき事をあえて言うならば、立ちあがって家へと向かうだけになっていた。


 何か一つ忘れて居る気もするが、思い出すようなことでも無かろう。俺は未だ焔燃え上がる焼却炉―――じゃあ無く焼き場を眺めて、その言葉を頭に浮かべた。


 ……もし仮にだが、それなりに大事な用事だったら……ああ、笑えねぇ……



「……くあぁ……」


 やはりまだ眠いか、自然と欠伸が出る。
 俺は境内の裏にある自分の家へ、足を進めて行く。


 朝の始まりから不幸な目に遭うとはな……ついてない事この上ないとは、正にこの事かもしれん。間にあうからいいモノを、飯もぬきなら地獄のフルコース出来上がりだな。


 そんな如何でもいい考えを巡らせて、俺はゆっくり歩いて家まで辿り着き、どうも痛みが残っている気がして緩慢な動作になりつつも、玄関をくぐっ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ