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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 正体
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「ご馳走さまでした、珍しい料理でしたけどおいしかったです」

 ササナキの宿【紅葉】。
 ここで出される食事は、やはりというべきか和食であり、山の幸をふんだんに使った朝食らしくシンプルな山菜料理だった。
 昨晩の肉料理なども加わった色とりどりの料理も思わず舌鼓を打つものだったが、今朝もまた普段味わえないすばらしいもので、明日から舌が肥えてしまわないか心配になるほどだ。

「…………」

 回収に来た宿の男性が礼儀正しく腰を折りながらこちらが差し出した食器を受け取る。
 同時に、さりげなく伸ばされた手に握られた紙が僕に渡された。
 静かに出入り口の戸を閉めながらまた腰を折る男性。その姿は宿に訪れた人間に対する礼儀以上の意味合いが込められていて、わずかに動いた口元が無言でその必死さを訴えかけていた。
 戸が完全に閉まる。
 男性の歩き去っていく音、戸の向こうに意識を向けながらそれ以外の不自然な物音や気配が無いことを確認する。
 しばらくそのまま集中していたが、特に妙なものを感じることは無く意識を戻す。

「うまくいったみたいだな。手に入ったよ」

 振り向き、僕が発した言葉に安堵の息をはいたのはウェンディちゃんだった。
 食事をしていたときも気が気ではない様子だったし、今もシャルルをぎゅっと抱きしめていた。

「よかった……」
「ああ、とはいえこれはまだ第一段階に過ぎない」

 いうと、ウェンディちゃんは一転。安心した顔を真剣なものへと変える。
 先ほどまで宿の食事が並んでいた場所に広げたのは今あの男性が持ってきてくれた紙、ササナキ近辺の森の簡易地図だ。
 流石に手のひらに隠せる程度の大きさなので小さく見づらい。それに急遽作ってもらうことを頼んだため距離や目印のありかなどそれほどしっかりしたものではないだろう。
 それでも、ゼロから探すよりはずっと楽なはずだ。

「さて、じゃあ昨晩の話を整理しよう。ウェンディちゃん、もう一度話してもらってもいいかな。ここササナキの住民を脅し、収入を奪い取ってるっていう闇ギルドの話」

 昨日から感じていた住民のやつれ方と妙な視線の正体、闇ギルドの存在を。
 この情報を持ってきたのは、予想外なことにウェンディちゃんだった。それも、温泉からの帰りに、である。
 経験の無い温泉というものに好奇心を刺激され僕はそれなりに長い時間昨晩の温泉を楽しんでいた。それこそ川の水で濡らしたタオルで済ませていた日もあったというのに昨晩ほど入浴していたのは記憶の中では初めてのことだった。人もまばらであり、中には一人で足を伸ばせる湯船もあったので僕ともあろうものが目的を一瞬忘れ満喫してしまったのだ。
 妙な視線や雰囲気のことを思い出す頃には一時間がたっていた。
 とはいえ、女湯で騒ぎがあ
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