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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第八話 炎の魔人
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 ―――世界が震えた。
 炎の竜巻が内側から弾け、その衝撃で周囲一帯の雲が吹き飛んだ。
 聖堂騎士たちが乗る騎獣やシルフィードが嵐に翻弄される木の葉のように吹き飛ばされる中、それを直前にしていながら士郎は甲板の上に立つ続けていた。
 甲板の上を走っていた炎が甲板事消し飛び、あちらこちら穴だらけとなったそこに立つ士郎は、不動の姿勢で炎の竜巻があった場所の中心に立つ男を睨み付けていた。
 ソレ(・・)は、最早ワルドとは言えなかった。
 姿は、炎の竜巻が生まれる前と一見すれば変わっていない。
 確かに服の大部分が燃え尽き、ボロを纏っているようにも見えるが、言ってしまえばそれだけである。
 四肢も一つとして欠けていない。
 その整った容姿も変わりはない。
 しかし、それでもソレ(・・)はワルドとは言えなかった。
 胸に開けられた穴の奥に炎を揺らめかせ、呼吸の度に炎がその口元が上がっている。
 身体の周囲が揺らめいているのは、その身が莫大な熱量を溜め込んでいる証拠だ。
 現にソレの足下から煙が上がり、燃え上がり始めていた。
 僅かに身体を隠していた引っかかっていただけの服にも火がつき、あっと言う間に燃え尽きてしまう。
 繊維の一本でさえ身に付ける事のなくなったソレだったが、直ぐに代わりのモノがその裸身を覆い隠した。
 ソレは炎であった。
 一瞬見えたソレの身体。
 全身至るところなく走った傷。
 まるで陶器で出来た人形に走る傷のようなそれの隙間から吹き出した炎が、服の代わりにその身を覆い隠したのだ。
 全身を炎で身を包んだソレの周囲から自然と炎が上がり始める。
 再度炎に包まれる甲板の中、ソレはゆっくりと顔を士郎へと向けた。


 「―――ッ!!」


 物理的に感じられる程の圧力に息を呑む。
 燃え上がる甲板を背にした、まるで炎を従えるかのようなその姿。
 その姿はまさに、伝説に詠われし―――魔人。



「―――……炎の魔人(イフリート)



 ―――■■■■■■■■■■■■aaaaaaaaaaaaaaaaaaa―――ッッッ!!!!!


 


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