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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
79話
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とって確かにジゼル・ローティその人だった。
「いえ……ちょっと」
 クレイはなんでもないように苦笑を浮かべて見せた。
「それよりジゼルさん大丈夫なんですか? 被弾したって……」
 クレイは、背後の《ガンダムMk-V》を意識した。
 メガ粒子砲の一撃を根本から食らったのだろう。腕と胴体の接続部分まで金属が融解により変形し、人間でいう所の肩の辺りは黒くくすんでいた。
 「まぁなんとか無事かな」言葉とは裏腹に、ジゼルの顔は無事であることの安堵を露ほども感じてはいないようだった。
「悪いね、本当はあたしとヴィルケイが行かなくちゃいけないのに」
 告解。己の一瞬の油断への悔いを滲ませたジゼルが唇を噛む。先任という立場にも関わらず、後任を前線に出すことの苦悩。クレイにその感情はわからなかったから、「大丈夫ですよ」といつも通りの声色を出した。
「隊長も言ってましたけどネオ・ジオンの目的がここの占有にないとしたらそう長く戦わないでしょうから……」
 ジゼルはしかし、眉間に皺を寄せたまま釈然としない顔をしていた。そうではない、あたしが言いたいことは―――言いかけ、ジゼルは止めた。代わりにいつもの表情に、年相応の無邪気と柔和な笑みを浮かべて、ジゼルはクレイの胸を軽く拳で叩いた。
「隊長に聞いたけどあの《ゲルググ》のパイロットだったんでしょ? さっきの感覚、忘れないでね。クレイのさっきの様子なら誰にも負けないから」
「見てたんですか?」
「遠くからね」
 言って、ジゼルは拳を解くと、ぽん、とクレイの胸を押した。理解し、敬礼したクレイは振り返りながら己の《ガンダムMk-V》の元へと向かった。
 壁面のエレベーターでキャットウォークの上へ。赤紫の《ガンダムMk-V》の目前に立ったクレイは、そのまま開放済みのコクピットハッチを潜った。
 微かな未視感の残余。それを無意識化に押し込めて、クレイは素早くシートに着座する。
「08、着座完了しました」
(01了解。全機、着座完了を確認した)
 ディスプレイに通信ウィンドウが3つ立ち上がる。
 フェニクスとエレア、そして……攸人。
 彼は大丈夫なのだろうか―――クレイの襤褸になった記憶のどこかで、……神裂攸人の泣き顔がちらついた。
 人を殺してしまうことが恐ろしい、と言っていた。……攸人と意識してその話題に触れることはあれから無かったが、今はどうなのだろう? 機内カメラの向こうに居る……攸人の顔はヘルメット越しではっきり見てはとれなかったが、生体データを見る限りは平常時を上回っているくらいだった。
 己の感じる罪悪を乗り越えたのだろうか。だとしたら、やっぱり……攸人は凄い奴なんだな、と思う。クレイは己の手に残る形容しがたい心地よさの滓と、目元に微かに残る液体が乾いた感覚に酷く―――クレイ自身が驚くほ
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