75話
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
低さ故だった。
攻撃警報の甲高い音がジゼルを急かす。苛立たしげに市街地の方に目をやって―――。
数十km先の映像がフォーカスされる。そこに映ったのはロングバレルのライフルを構える姿ではなく、《リックディアス》の頭にシールドの切っ先を突き刺す黒いMSの姿だった。
機種特定不可能。だが、その外見は―――。
「黒い―――《ゲルググ》―――?」
呆然とその姿を捉えたその動作が、何よりの隙だった。
不意にコクピットの中に反響するロックオン警報。心臓を冷たい手で握られた様な感触の中、攻撃方向を確認した時には遅かった。
防眩フィルターでも殺しきれない光軸が直下より屹立し、全天周囲モニターの中を白に染める。灼熱の閃光は《ガンダムMk-V》の左腕を吹き飛ばし、そうしてそのままコロニーの反対側を焼いていった。
回避できたのは一重に反射で回避機動を取れたからにすぎなかった。あとコンマ数秒身体の反応が遅れたなら、恐らく今ので間違いなく死んでいた。
だがそれでも、コロニー内空戦での四肢の欠損はそれだけで致命的だった。常に気流が変わる空間の中では、AMBAC機動の重要性は宇宙空間のそれに匹敵、あるいはさらに重要だ。下手なパイロットならそれだけで地表に墜落し得る。
なんとか持ち直せたのはジゼルの技量の為せる業だった。が、その一瞬の錐もみなど、敵からすれば狙ってくれと言っているようなものだった。
下の映像がディスプレイにフォーカスされる。
格納庫を破壊しながら飛翔するその機体―――ORX-005《ギャプラン》。どこかの試験小隊の機体を示す所属だったが、それを仔細に検討している暇などミリほども存在していなかった。
《ギャプラン》のシールドに内蔵された砲口から閃光が奔る。
回避―――不可能。
(07―――ジゼル!)
ヴィルケイの声が遠くに聞こえる。
暴力的な光は、ジゼル・ローティの瞳を白一色に埋め尽くしていった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ