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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
72話
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いが、敵は精鋭ぞろいだと言うことを忘れるな」
 応の声が無線越しに鼓膜を打つ。胸の高鳴りを感じた男は、下面に降りたキャットウォークに乗った。柱のスイッチを入れると、細長い通路が両脇の柱に支えられ、ゆっくりと上昇していく。
 実弾を装備した試験部隊の情報は掴んでいる―――だが、そこもすぐにでも制圧するだろう。
「フォックス・ハントか―――久しぶりだな」
 《リックディアス》のメインカメラを眺めた男は、懐かしさを漂わせた冷たい笑みを浮かべた。
                    ※
 ニューエドワーズ司令部。
 
 通路は暗い。道を行く3人は各々声を出す余裕すらなく、忙しなく周囲に視線を投げていた。
 一見して3人は司令部のMPと同じ服装をしていて、そしてその手に持つサブマシンガンも間違いなく地球連邦軍で正式に採用しているものだった。
 『眼下』に3人の男を見とめ、その男は息を飲んだ。
 右手に握る得物の感触は固い。人を殺傷するに余りある凶器は、されどあの3人の武装に比べれば玩具のようなものだ。
 油断なく周囲を警戒する3人。2人が前に展開し、1人が後ろで援護といった様子で歩いていた。
 2人が男の下を過ぎていく。まだ動く時ではない。そう、後ろの男が男の真下を過ぎた、その瞬間こそ―――。
 男は、予め外しておいた格子を素早く、それでも無音で外すと、即座に飛び降りた。
 体重100kgを超す巨体が音も無く着地する。同時に、男は右手に持った消火用の斧を力いっぱいリーダー格と思われる前方左の男の背に投擲した。
 強靭な肉体から放たれた斧は目まぐるしく回転し、男の首と背中の境目あたりに深々と突き刺さる。一撃の元に殺戮された男が斃れるより早く、男は眼前の男の足を払うと同時に首に腕を回す。咽喉元にナイフを突きつけながら、大柄な男は男の右腰に刺さっていたホルスターからハンドガンを抜きだし、流れるような動作でセーフティを解除しつつ前方の男に銃口を向けた。
 男が振り返る動作は、のろかった。2発の銃声と共に黒々とした孔から飛び出た金属の弾丸は頭蓋を破壊し側頭部から侵入し、イデアのための器官を単なる肉の塊へと化した。
 腕の中で男が身動ぎする。
「動くな。お前が母親の股から出てきたことを呪うことになるぞ」
 首を絞める力を強め、その巨漢―――クセノフォン・ブリンガーは、まるで旧友に挨拶するがごとく穏やかな声で言った。
 2秒。
 2人を屠殺し、1人を無力化するのにかかった時間である。
 慄きながら必死に頷く男を見ながら、クセノフォンは内心溜息を吐きそうになった。
 以前の自分なら、もっとスマートに出来た仕事だ。少なからずわざわざ銃を使う必要は無かった。銃と言うのは便利な武器だが、付随して生じる音がどうしてもデメリットになる。もちろ
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