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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
70話
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「まったくあいつは妙なところで抜けているな」
 ぶつぶつと独り言を吐きながら、フェニクスは宿舎の廊下を歩いていた。こつこつと軍靴が床を叩く音が耳朶を打ち、どこか死んだように静かな廊下の中をゆらゆらと反響していく。
 クレイ・ハイデガーは生真面目な男だ。仕事を頼めば期限前に悠々と仕事をやり終えるし、内容も一年目にしては卒が無い。ただ、時々レポートの提出などが遅れたりするのが欠点か―――やり終えて、印刷したまま机の上に放っておいてしまうなど、やり終えているのに忘れることがあるのは如何ともしがたい。有能ではあるのだが、まだ一年目だ。色々と早計な判断は出来まい。上手く育てば、人の上に立つという意味では大成する人材ではないだろうが、将来的には上に立つ人間の補佐官としては有能さを発揮するだろう。
 微かに笑みを浮かべる。ガスパールと同じことを言っている。思えば、自分を連邦に引き抜いたのもあの男だった。
 似た者同士だな、と思う。上に立つ人間にはユーモラスが必要なのだ。クレイにも、そしてフェニクスにもその一面は欠如していた。
 そして、誰かの手で意図的に引き抜かれた、という点も―――。
 フェニクスは表情筋をミリほども動かさなかった。堅物そうに口元を結んで、琥珀色の瞳はいつも以上に鋭く切れ上がっていた。
 鏡の一枚ほどの飾り気のない階段を上がって、廊下の突き当りを左に行けばクレイに宛がわれた個室があった。
 この部屋の暗証番号は立場上知り得ていたし、エレアからも何度か教わっていた。留守中に悪いかな、とは思うが、何分早急に必要になった資料だ。提出を忘れた身分で口答えはさせまい、などと思いながら、壁に埋め込まれたタッチパネルに手を触れて―――。
 安物っぽい電子音と共に認証完了を示す青緑色の光が灯り、三葉虫が這った後みたいな「yes」の黒い文字が急かすように浮かび上がった。
 自動ドアが音も無くスライドし、黒い穴がぽっかりと口を開けた。部屋の奥では、弱弱しい人工の白い光が部屋の中で申し訳なさそうに身を縮こまらせていた。
 ぽかんとしながらその中の空間を眺める。そう言えば、クレイは最近よく部屋のロックを忘れているらしい。今日はデスクのライトも消し忘れ、か。
 真面目なんだか抜けているんだか。死んだように静かな部屋に足を踏み入れ、フェニクスは寂れたような光の下へと向かった。
 デスクの上は煩雑に散らかっており、3cmほどの厚みのある本が山のようになっている。辞書も何冊かあるらしい。
 見ればベッドの上も片付いておらず、今日の早朝はこの部屋は焦りの最中にあったというわけだ。
 もう一度デスクを見る。基本的に彼曰く、出していない時は仕事用のPCにデータとして入ったままか、あるいは机の上にあることが多いのだとか。
「これか」
 A4サイズで50枚ほどの
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