64話
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素振りを見せていた。
顔が熱くなる。それと同時に、酷いほどの憫然を感じて―――。
エレアの手が頬をそっと包む。ぎょっとして彼女を見返せば、紅い瞳は果敢無い光を受けてもなお確かに赤かった。
エレアが手を離す。そうして立ち上がった少女は少し距離を置き、黒いジャケットのファスナーを降ろした。そのぎざぎざと鼓膜を刺激する音の後に、するすると布同士が擦れる音がふにゃふにゃの脳みその奥へと這いずっていく。
「―――あれ」
だか、クレイが目にしたのは彼女の白い肌ではなかった。
むしろ、大部分黒かった。何故か黒いカーゴパンツを脱いでいるのに、足も黒かったし上着も何故かぴったりフィットな何かで黒かった―――って。
「なんで中に水着を着ているんだ…」
しかも競泳用で。しかも意味不明なニーソックスをはいて。
「クレイが好きそうなのを盛り合わせてみたのでしたー」
姿を誇示するように両手を広げるエレア。
「なるほど……なるほど……?」
納得するところなのかなんなのか―――ともあれ、暗闇なのが惜しいな、と比較的真剣に思った。
脱いだ軍服を下敷きにして、足を投げ出すようにして腰を下ろしたエレアは内股気味になりながら膝を曲げた。利き腕ではない右手を身体の後ろにやって支えにし、利き手の左手を自分の両足の付け根の方へと伸ばしていく。
薄い明かりの中で、はっきりとは見えるわけがない。だが、確かにエレアはそこを覆う水着の布をずらした。
そこには、確かに存在を刳り貫かれた瑞々しい差延があった筈だったし、また事実、暗く淀んでいた。
その源泉に惹かれるように、よろよろと立ち上がる。
クレイ・ハイデガーは、彼女の痕を慈しむようにして、その紅い裂け目に白いヴェールを被せた。
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