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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
39話
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 サイド8・1バンチコロニー『ニューエドワーズ』はある種お祭り騒ぎだった。
 一年戦争終結後、コロニー復興計画に先駆けて建設されたサイド8は正式なサイドというわけではなく、元々は新生サイド4―――元サイド5ルウム再建設のために建設された臨時のコロニー群である。各サイドの破損したコロニーを修復することで、僅か10年という歳月で完成されたコロニーは、しかしその後急速な時代の流れの中で忘却されていくことになる。同じラグランジュポイントを拠点として行われたデラーズ紛争から始まり、グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン抗争。そして、第二次ネオ・ジオン抗争―――休む暇なく戦争を続けてきた地球圏の中で、崩壊したルウムの戦略的価値などたかが知れており、誰も建設されつつあるサイド8に対して気にも留めなかったのである。宇宙の過疎地でしかなかったサイド8が再び時代の脚光を浴びるきっかけとなったのは、UC.0093年の出来事だった。第二次ネオ・ジオン抗争の唐突な終焉に伴い、また来るべきUC.0100年を迎え、地球連邦政府はサイド5―――フロンティアと命名された新生サイド4建設を宣言。サイド8はその重要拠点と見なされるに至ったのである。そのニューエドワーズを拠点に、旧茨の園を不法に占拠しているジオン残党―――ありていに言って宙賊たちを討伐し、サイド4建設のための地を平定する。今回の作戦の概要は、おおむねそんなところだった。
「ちょっと、またクレイはシミュレーターにでも籠ってるわけ?」
 顔を酒で真っ赤にしながら、琳霞ががなり声を上げた。その度に、サイド8に訪れた機動打撃群の連中がわーわーと叫び声をあげていた。
 反連邦意識がジオン共和国が今回の作戦に参加しているのも、歴史的な作戦になるであろうからこそ、だ。かつての敵同士が手を取り合い、破壊されたサイド復興のために尽力する。市民向けには良い広告だ。それを弁えているからこそ、ジオンの人々は特に不平も漏らさず連邦の人々と共に居た。それに、案外話してみれば現場の人間は意気投合するものである。琳霞の同僚たちも、顔を真っ赤にして連邦の軍人たちとサイド3のソープ嬢についてだの可愛げのある醜い議論を繰り広げていた。
「まぁいつものことですから」
 琳霞の大ジョッキに並々とビールを注いだジゼルが応える。ふん、と鼻を鳴らした琳霞は1Lはあるであろう黄金の液体を一息で飲み切った。
「全くメシは旨いけど酒はダメダメね! サイド3を見習ってほしいわ!」
「さっきはサイド3にはここを見習ってほしいって言ってましたけどね」
 琳霞と同じくらい飲んでいるのに顔色を全く変えない部下が口を出すと、琳霞の握っていたジョッキが弧を描いて男の顔面に炸裂した。頑強に作られたジョッキは傷一つつかなかったが、部下の鼻からは真っ赤な血飛沫が舞った。どっと周りで笑いが起こ
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