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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
30話
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考えなのやら」
「まぁ邪魔はしないとは言っていますから」
「だといいがな。インテリ風情のクソガキどもが調子に乗って……」
 パンの半分を無理やり口の中に詰め込んだ。
「あープルートといちゃこらしたいー」
 ベッドに寝転がったエイリィは、気の抜けたように丸い声を吐いた。生産性の無い会話はやめにしよう、という意図だったが、その発言自体あまり生産性が無かった。それでもマクスウェルは察したらしく、気の抜けたようにベッドに寝転がった―――ライスボールを口に押し込めながら。
「今までお楽しみだったんじゃないのか?」
 もごもごとした声色だった。食事となると、いつもの俊英さと威厳は微塵も無く掻き消えてしまうのである。
「隊長、デザートは別腹でしょう?」
「なるほど……なるほど……?」
 なるほど、と口にはしているが、あまり納得はしていないらしい。再び眉間に皺を刻んだ隊長は、はたしてエイリィのプルートデザート説について思いをめぐらしているのか、任務について考えているのかはわからなかった。おそらく、前者だろう、とエイリィは考えることにした。
「そう言えばプルートは上手くやっています?」
「さっき定時連絡があった。目標にはまだ合っていないようだが何か興味深いことがあったようだな」
「興味深いこと?」
「あぁ―――まだ詳しくは言えないようだが」
「いい人でも居たのかな?」
 どういう意味でのいいなんだ、とマクスウェルが眇める。それは特に気にもせず、プルートのことを思い浮かべ―――あ、と一つ思い出した。
「そういえば彼が言っていましたよ。教導が一通り終わったらリゾンテでゆっくりするって。プルートも行くそうで」
「リゾートかぁ……」
 マクスウェルは生真面目に悩み顔をした。エイリィにはそれがちょっと驚きだった。マクスウェルは食べ物のこととなると執心が強いが、観光や娯楽には全く興味がない堅物と思っていただけに、リゾートと聞いて悩み事をするとは思わなかった。隊長の違う一面を見たようで新鮮な気分に―――。
「青い海……魚が旨そうだな。確か養殖もやってるんだったか?」
 やはり隊長は隊長だった。脳神経の発火が作り出すビビットカラーの魚料理に唸り、そうしてそれを口にできないことに肩をがくっと落とす大尉に同情していいのか呆れていいのか。困惑しながらも、エイリィは寝転がったまま奇声を上げて伸びをした。
「あたしもリゾートいきたーい!」
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