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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
28話
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ハミルトンの言葉にも、結局先ほどと同じような答えを口にした。ハミルトンは呆れたような諦観したような顔をした。
 最後に複数の生体認証と、それに伴う20桁のパスワードの入力を済ませると、隔壁と見まがうほどの数十cmにも及ぶ分厚い扉が左右にスライドしていく。
 ひやりと冷たい風が吹き抜けてくる。その音が、眼前の巨大ながらんどうのような格納庫を渦巻いた。
 静かと言えば極めて静かだった。行き交う整備兵たちは無駄口1つも叩かず、さながら精密機械のように動いている。身にまとうジャケットは軍用のBDUのものではなく、サナリィのロゴが描かれたものだった。
 そんな整備兵たちが取りつく機体―――モニカがその機体を目にしたのは、人生で3度目だった。
「まったく月の女帝は案外世話焼きだな。わざわざカトマンズから持ってくるとは」
 ハミルトンは、呆れを多大に含んだ、というよりももはや呆れが主体になっているような感心の声を出す。
 まだ大部分の装甲は未装備であったが、一瞥してわかるのは機体の構造の異様さだった。現在連邦軍主流の第2世代機だけでなく、第3世代機の《リゼル》や《ゼータプラス》にもまして複雑かつ全長20mを超える巨躯は、圧巻を通り越して不気味としか思えなかった。
 Ζ計画に属する機体であることは、MSの共有規格意外にアナハイム製可変機のパーツを見るに加え、2つ並列したカメラアイにΖタイプの《ガンダム》が有する特異な顔立ちを見ればわかることだった。そして何より驚愕なのは、その機体の追加装備の建造に、わざわざもう1つのガントリーを用いて組み立てているという点だった。
「あれの実装はまだだったかな?」
「はい。一応組みあがって、稼働試験を行ってからの実装になる予定です」
 ハミルトンは、実に満足げに頷く。
 それは、独り限界への沈黙を湛えていた。
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