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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
24話
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運んできた店員からひったくるようにしてジョッキを受け取り、液体を浴びるようにして胃の中に流し込んでいく。もう酔いが回りすぎて何を飲んでいるのかもわからないが、取りあえずアルコールを摂取できればそれでいいのだ。
「知り合い?」
「は! あんなの知り合いだったらと思うだけでぞっとするわよ」
 事実。
 知り合いと呼ぶほどの間柄ではない。因縁の相手―――そんな名称が精々の相手だ。おそらくそんな琳霞の様子からそれとなく悟ったのであろう、同僚は興味がなさそうに曖昧に呻くだけだった。
 そう―――因縁だ。あいつはそんなこと、欠片も思っていないに違いない。涼しい顔をして、あたしを足蹴にしたあいつ―――。理性的でないのは重々承知。一方的な憎悪の感情であることは猶更了解している。だが、人は理性なんかで縛られない生き物なのだ。神だかなんだか知らないが、そんなものはとうの昔に死んでいる。人は獣と同じで、人はヒトなのだ。
 なんでもいい。適当にテーブルの上にある皿から何かとって口に運ぶ。味はよくわからないが、不味くないから揚げ芋だろう。油っぽいし。・
 ぼそりと。その名を、呟いた。
「あ? 何?」
「何でもなぁい!」
 ようやく鳩尾への一撃から復帰した同僚の鳩尾へ、もう一度宙を舞った琳霞の握りこぶしが吸い込まれていく。「あ、お前また…!?」という悲鳴の滓を残して沈んでいく同僚に一瞥もくれず、苦い顔をしながらカリカリに焼けたソーセージを加える。
 クレイ・ハイデガー…。
 その名前を、胸の中で呟いて。
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