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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
12話
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あげが、もう大人になり始めた彼女に幼さの残り香を纏わせていた。
 プルートは、普段見せない隊長の容貌に少し驚いた様子だったが、すぐに気を取り直して敬礼をした。
「いつものことだけど凄いよ!」
 敬礼を解きながら、顔を赤くしたプルートはつっかえつっかえといった様子でなんとか声を出した。
「こいつの性能の良さのお蔭だよ」
 あまりに顔を真っ赤にするプルートがつい面白く、笑みというより笑いながら顎をしゃくる。つられるようにして、厳かに佇む20mの巨人を束の間見上げると、プルートは、今度は委縮したように顔を青くしてしまった。
「本当に良かったの? 私なんかに……」
「俺は隊長だ。部下の命を預かるんだ。そのための最善の策だと思っている」
 ですが、と声を沈ませるプルートの肩に手を置く。ハッとしたように顔を上げたプルートは、それでもまだ困ったような、悩んでいるような目だ。
 それとも―――プルートの容貌から視線を上げ、その向こうに視線を投げた。
「シュティルナー少尉は《ドーベン・ウルフ》では物足りないかな?」
 わざとらしく、かしこまった声で言った。
 マクスウェルの視線の先には、いつもの格納庫ではなくパラオのがらんとした格納庫のガントリーに佇む、漆黒の孤狼が尊大な威容を湛えていた。
 さっと目を見開いた彼女は、ぶんぶんとちぎれんばかりに首を横に振った。
「そういうんじゃないよ! でも―――!」
「まぁそういうことだ。良い機体にのればそれだけ生存率は上がる」
「それは―――そうだけど!」
 プルートはなお食い下がる様子で声を張り上げた。
 随分と慕われたものだ。無口で不愛想な自分には勿体ない部下だ、と思いながら―――部下だからこそ、マクスウェルはいつもの凛然とした面持ちにした。
「シュティルナー少尉!」
 そこまで、強い声ではなかったが、通りのいい低い声は広々とした格納庫の中に強く響く。びくりと身体を震わせたプルートは、ほぼ条件反射的に背筋を伸ばした。
「単に戦力の平均化のためだけに機体の乗員配置を変えたわけじゃない。さっきも言ったが、俺はお前やエイリィの命を預かってるんだ。安っぽい感傷でやっていると思ってもらっては困るな」
 語気こそ荒くはないが、むしろ脳髄の奥に沈むようなマクスウェルの声は畏れを抱かせる。直立不動に身を固めたプルートの口元が幽かに震えた。彼女が何を思ったか、マクスウェルには知れぬことだが、濡れた深海の瞳の奥でぬらと蠢くものを確かに見て取った。プルート・シュティルナー―――『欠陥品』というスティグマを刻まれた彼女の、なんと生々しいことだろう。マクスウェルは自然と胸中がざわめくのを感じながらも、そんな感情は億尾も出さずに固い表情を保った。
 申し訳ありませんでした。先ほどと同じように―――違う。より固く、鋭い
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