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通報してはならない
第四章

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「コーヒー、ニューヨークの洒落れたのを飲みながらな」
「それじゃあ」
 岡田の言葉を受けてだ、良平は。
 自分の行きつけの店に彼を案内した、そうしてだった。
 通報のことは完全に忘れてしまって幼馴染みとの話をしたのだった、この数日後。
 良平はアントニオだ、大学でこのことを話した、岡田との再会について。
「いや、人って何時何処で会うかわからないね」
「そうだね、偶然の再会とかね」
「あるよね」
「それでその幼馴染みとだね」
「積もる話を一杯したよ」 
 良平はアントニオに上機嫌で話した。
「楽しい時を過ごせたよ」
「それは何よりだね」
「うん、いや」
 ここでだ、良平は。
 通報しようと思っていた事件のことを思い出した、それでだった。
 アントニオにだ、このことも話した。
「ただ、悪いことをしたよ」
「彼にかい?」
「いや、実は殺人事件を見てね」
 そしてというのだ。
「スーツを着たお年寄りが誰かに撃ち殺されて。それでね」
「射殺?」
「そう、それを通報しようと思っていたところに彼が来てね」
 そしてというのだ。
「通報し忘れていたよ、悪いことをしたよ」
「ちょっと待ってくれるかな」
 ここでだ、アントニオは。
 真顔になってだ、良平に問うた。
「君が日本からの友達に会ったのは水曜日だね」
「そうだよ」
「そしてその事件があった場所は何処かな」
「そこはね」
 何処かとだ、番地までだった。良平はアントニオに話した。
 そこまで聞いてだ、アントニオは蒼白になって親友であり義理の弟にもなっている彼に対してこう言ったのだった。
「運がよかったね」
「運が?」
「うん、実はその殺されたご老人はね」
 その人はというと。
「うちと対立しているファミリーの幹部だよ」
「マフィアの!?」
「そうだよ、そしてね」
「まさか」
「その人を殺したのはね」
 まさにそれはというと。
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