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手の平の中
第五章

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「上手にやっていってるんだよ」
「間にも入ってくれているしな」
「本当にいい姉ちゃんだよ」
「最高の彼女だ」
 こう言ってだ、二人共真礼に全幅の信頼を寄せていた。その二人の言葉も聞いてだ、真礼の友人達は気付いた。
「ひょっとして真礼って」
「そうよね、悪女じゃなくて」
「良妻賢母?」
「そっちの方?」
「おねねさんみたいな」
 出て来たのはあの豊臣秀吉の正妻だった、北政所ともいった。
「ああしたタイプなのかしら」
「むしろ」
「あっ、お母さんに言われたの」
 真礼本人もここで言う。
「おねねさんみたいになれって」
「実際になの」
「そう言われたの」
「いい奥さんになれって」
「いいお母さんに」
「おねねさんは子供はいなかったけれどね」
 だがそれでもというのだ。
「ああした人になれって」
「ううん、そうなのね実際に」
「おねねさんみたいになれって言われたの」
「真礼のお母さんに」
「そうだったのね」
「お母さんが凄いのよ」
 真礼は目を輝かせてだ、自分の友人達に話した。
「優しくて料理上手でしっかりしててお洗濯もお掃除も完璧で」
「スーパーお母さん?」
「ひょっとして」
「しかも奇麗でスタイルもよくて。髪の毛も奇麗でいつも清潔にしててお洒落で」
 真礼は自分の母親について熱く語りはじめた。
「頭もよくて。八条大学文学部で主席だったのよ。学校の先生や博物館の学芸員、図書館に働くことも出来てね」
「えっ、真礼ってひょっとして」
「真礼自身も?」
「お母さんに完全に」
「手の平に」
「とにかく凄いお母さんなの、ああなりたいわ」
 真礼も言うのだった、その真礼の賞賛と言っていいまでの言葉を聞いてだった。彼女の友人達は気付いたのだった。
「一番凄い人はね」
「真礼のお母さんね」
「自分の娘さんの育て方は完璧みたいね」
「完全に手の平じゃない」
 真礼がねねになったのには訳があった、ねねも人の娘で母がいたのである。その母こそが大元だったのだ。


手の平の中   完


                          2015・4・25
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