暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
虎と龍の舞う終端
[13/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
居た。
 笑顔を浮かべて送り出した戦士達。短い間だが絆を繋いだ。
 いい奴等だった。楽しかった。支えられていたのだ、彼らに。
 それがまた無に帰した。少女はまた全てを失った。

 赤い髪の少女は動かない。
 近寄ってくる動物にも癒されることなく、宙を見据えて動かない。

「……恋殿」

 耐えきれない、と小さき軍師は思った。
 このままでは壊れると思った。
 泣くまいと決めていたのに泣いた。それでもこの張り裂けそうな心はどうしようもなかった。

「あいつらの笑顔の意味を……思い出してくだされ」

 語り掛けても無意味だ。愛しい人は壊れている。人形に話し掛けても、答えなど帰ってくるはずがなかろうに。

「あいつらの命の重さを……思い出して、くだされっ」

 また涙がほろりほろり。
 嗚呼ダメだ。もう止められそうにない。漏れ始める嗚咽を抑え付けて……ねねは恋を真っ直ぐに睨んだ。

「あいつらはっ……ねねと、恋殿の為にっ……命を捧げてくれたのですぞっ!」

 引き裂かれそうな心を抑えて、ねねはあの時に笑顔を浮かべた。
 せめて最期くらいは、自分の笑顔を覚えていて欲しかったから、と。
 自分のせいで散らしてしまった命達。重責が圧し掛かる心は何時でも悲鳴を上げる。

 結局は復讐。個人的な欲望の為に他者を利用している自分は、大嫌いだった者達と同じになっているのだ。
 それが嫌で嫌で、でももう止まれなくて、止まりたくもなくて、走り続けるしかなくなった。

 されどもやはり、胸が痛かった。
 自分達の為に命を捧げてくれる彼らを見ると、どうしても……。

「うくっ……っ……お願い、なのですっ……」

 襟を手で掴んで揺すった。
 赤い髪の少女はねねのことを見なかった。

「れん、どのぉ……お願い、なのですよ……ねねは……」

 俯き、零れる涙の雫は次々と彼女の衣服に吸い込まれていく。

「ねねは、もう……一人は……いや、なのです……」








 かさり、と木の葉の音が幾重。
 動物達が急いで離れて行く。
 泣きじゃくる少女は気付かず、赤い髪の少女に縋りついたまま。

 近付く気配に気付いて赤い髪が揺れる。
 来た、と一言だけ残して立ち上がり……ピタリと動きを止めた。
 何故、敵を殺しに行かないのかと小さな少女は不思議に思った。
 赤い髪の少女はそのまま座り、また動かなくなった。

 疑問が浮かんで、小さな少女は涙で揺れる目で辺りを見回した。

 ぼやけた視界が少しずつ晴れて行く。
 そうして晴れた先で、彼女の目からはまた雫が流れ始めた。

 引き裂かれた口は不敵で、爛々と輝く目は期待に満ちていて、送る視線は暖かく。
 彼女は、歯を噛
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ