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黒魔術師松本沙耶香 客船篇
2部分:第二章
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第二章

「我が国でも有数の魔術師ですから」
「黒魔術師よ」
 その魔術師というのは少し訂正させてきた。魔術は魔術でも黒魔術であるというのである。彼女の魔術はだ。
「私はね」
「そうでしたね。貴女の魔術はでしたね」
「私の魔術は黒魔術」
 思わせぶりな笑みはさらに深いものになった。そしてその妖艶さもだ。彼女の美貌は陽の世界にあるものではなかった。夜の世界にあるものであった。
「それだから」
「黒魔術ですか」
「黒魔術は闇の魔術」
 その漆黒の服の中で言う言葉はであった。何よりも説得力があった。闇の中からの言葉そのものだからである。
「そしてその手段は決して美しいとは限らないもの」
「闇の世界のものだからですか」
「闇もまた真理の中にあるもの」
 今度はこう言うのであった。
「決して悪ではないものだけれどね」
「闇の中にあっても悪ではないのですか」
「そうよ、ただし善でもない」
 それでもないというのである。
「光も同じようにね」
「つまり白魔術師でも善とは限らないのですね」
 男は話を聞いてそれを逆説的に述べたのであった。
「そうなるものだと」
「その通りよ。もっとも私は自分を善だと言うつもりもないわ」
「それもないのですか」
「私は背徳には興味はあるけれど」
 ここでまた笑うのであった。
「善には興味はないのよ」
「そういうことですか」
「そうよ。それじゃあ」
 沙耶香はまた言うのであった。
「私についてはそういうことでいいわね」
「はい」
 男もまたそれでいいというのであった。そのうえでまた言ってきた。
「この仕事の解決には関係ありませんので」
「人格や性格はなのね」
「まずは事件の解決です」
 まさにそれだというのだ。
「私が依頼したいのはです」
「それね」
「その客船の中で起こることです」
 彼の話はここで大きく限定された。それからだというのだ。
「それですが」
「それなのですか」
「はい、それでは」 
 こうしてであった。沙耶香は事件の解決を依頼された。こうして彼女は仕事場所に向かうのだった。そこはその客船だった。
 横浜の港に停泊している。かなり巨大な船であった。
「大きいわね」
 沙耶香はその客船の前に来てまずはこう言った。まさに見上げるばかりであった。白く場所によって黄金も見える。
「この船は」
「さて、それでなのですが」
「私の部屋はあるのかしら」
「あります」
 隣にはあの仕事を依頼してきた男がいた。
「もう用意してあります」
「そう、有り難う」
「ただ」
 しかしであった。ここで彼は言うのだった。
「あれで宜しいのですか?」
「ええ、あれでいいのよ」
 まさにいいというのである。
「私のお金でね。泊まるのだし」
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