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黒魔術師松本沙耶香 客船篇
18部分:第十八章
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第十八章

 その身体を沙耶香に見せながらだ・さらに言うのだった。
「貴女は満足にできるかしら」
「満足にとは」
「そうよ、私の相手は厳しいわよ」
 右手の肘を机に置いて拳を頬にやってだ。そのうえで沙耶香に問うてみせてきたのである。
「それもかなりね」
「大丈夫よ。私ならね」
「貴女ならなのね」
「そうよ。それじゃあ」
「そうね。じゃあ」
「楽しみましょう」
 女医を誘う言葉も出された。
「いいわね」
「ええ、じゃあ見せてもらうわ」
 女医は席を立った。そのうえで沙耶香に近付いてだった。彼女が今いるベッドのところに来てである。二人で肌を重ね合うのであった。
 それが終わってからだった。女医は服を着ていた。立ち上がってそのうえで白衣を羽織ってだ。今はベッドに仰向けに寝ながら微笑んでいる沙耶香に顔を向けた。沙耶香もその服は既に着ていた。ただネクタイのところはまだ解かれていた。
 その格好でだ。女医に対して言って来た。
「よかったわ」
「悔しいけれど負けたわ」
 そうは言っても満足した笑みを浮かべる女医であった。
「見事ね。私が適わなかった女は貴女がはじめてよ」
「そう。それは光栄ね」
「光栄に思っていいわ。それはね」
「嬉しい言葉ね。それじゃあ」
「ただの人じゃないわね」
 沙耶香への言葉である。
「貴女は」
「そう思うのなら思っていいわ」
「別の人も香りもしたし」
 このことも話してきたのである。
「もう既に一人。頂いているのね」
「花は摘むものよ」
 これが沙耶香の返答だった。
「綺麗な花なら何でもね」
「それで私もなのね」
「そういうことよ。それじゃあ」
 ここで沙耶香は立ち上がった。そのうえでネクタイを締めてだ。上着も調えてそのうえでベッドから出てであった。部屋の外に向かうのだった。
「私はこれでね」
「また来てくれるかしら」
「気が向けばね」
 今はこう答えるだけだった。
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあその時を楽しみにさせてもらうわ」
「それでね」
 ここで沙耶香は彼女の方に振り向いた。そのうえで最後に声をかけたのである。
「貴女だけれど」
「私が?」
「御主人と別れる気はないのね」
 問うのはこのことだった。
「それについては」
「ないわ」
 女医は微笑んで沙耶香のその問いに答えた。
「全くね」
「そう、全くなの」
「主人は愛しているわ」
 このことは間違いないと。それは確かな言葉であった。
「けれどね」
「けれど、なのね」
「女はね」
 ここで沙耶香を見て言うのだった。
「わかるわよね」
「ええ、よくね」
 彼女に顔を向けたまま微笑んでの言葉だった。
「私もまた女だから」
「女は身体を欲しがるものなのよ」

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