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ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第146話 2人の勇者
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 須郷……オベイロンは、高らかにショウの幕開けを宣言すると、芝居掛かった動作で、身体を一回転させ 両手を広げた。

「ただ今、まさにこの瞬間も。この空間、そして彼等の空間も全て、全ログを記録中だ! 精々いい顔をしてくれ給えよ?」

 その宣言を聞き、アスナは唇を噛み締めた。この場以外にも、もう1人いる。最愛の妹の、そして、妹の恋人の元にもう1人。今はもうこの方法しかない、とアスナは即座に判断した。
 キリトの方を見て、早口で囁いた。

「……キリト君、今すぐログアウトして。現実世界で、須郷の陰謀を暴くのよ。……私は大丈夫。だから レイを……皆を、お願いっ」

 自分の事よりも、何よりも耐えられないもの、それは皆同じだったんだ。最愛の人が苦しむ姿を見る事、それだけは耐えられない。だから、アスナはそう言っていた。キリトがここから脱出する事が出来れば、少なくともキリトは無事に帰る事が出来る。そして、キリトなら現実世界で必ず助けてくれる、そう信じて。

「アスナっ……!」

 キリトは、一瞬体を引き裂かれる様な葛藤を感じた。当然だろう。愛する彼女を置いて、逃げるも同然なのだから。だが、今は考えている時間さえ惜しい。
 この場には、いない玲奈と隼人。

 2人がいつまでも無事、という保証は何処にもないから。

 そして、何よりもこれだけの大規模な事をしでかせば、物的証拠が無くとも、捜査する事は可能だと思える。この世界に帰ってきて最初に訪問しに来たあの男に頼めば、間違いない。

 キリトは、必ず助けに来る。と頭の中で叫びながら、高重力に支配されているこの場で、懸命に指先を動かす。


――……だが、悪夢はこれからだった。


 決しの思いで振った指。……懸命に何度動かしても、ウインドウが現れないのだ。何度、何度振っても現れない。3度目を振った所で須郷は、堪えられなくなった様に、高笑いをあげた。

「アハハハハハ!!」

 身体を折り、腹を抱えて笑い続ける。そして、キリトの方を見て。

「言ったろう? ここは僕の世界だって! 誰もここからは逃げられないのさ!」

 ひ、ひ、と身体を何度も跳ねさせながら、そして周囲をまるで踊るかの様に歩き回る。
 そして、先ほど隼人と玲奈の映像を映し出した時と同じ動作を、再びパチンと指を鳴らすと、この無限の闇の空から、じゃらじゃらと音を立てて2本の鎖が落ちてきた。

 それは、玲奈を縛っている鎖と全く同じもの、だった。

 彼女を縛っている様に、まるで意思を持っている、須郷が宿っている様に、アスナの身体を這い回った。

「きゃあっ!!」

 アスナの右手、左手を縛り、釣り上げられた。そのつま先がぎりぎり床につくかどうかの高さ。

「き、きさまっ……
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