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珠瀬鎮守府
響ノ章
伝えられた言葉
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 二日後、私は退院した。外傷というよりは、精神的に不安定と見られたのかその手の治療が多かったが、早々と問題なしとの結論が出たのか、それとも病床の数が足りなかったのか、兎に角二日で退院した。
 病院は鎮守府内にあるもので、敵襲に際しほぼ無傷であった此処は大量の艦娘達でごった返していた。窓から見れる鎮守府内は、一部の復興が始まったが、未だ瓦礫の撤去は終わっておらず、痛々しいままだった。
 久方ぶりに帰ってきた私達の寮は、立入禁止の札が貼ってあった。側に居た警備の者に聞くに、損傷がありいつ倒壊するかもしれないということで現在取り壊し中らしい。ついでに、部屋にあった物は個別に保管してあるらしい。更には、忙しい中わざわざ女性を集めてやってもらったから安心してください、なんて笑いながら言う彼は、つい先日に重巡洋艦と地上戦を行った者の一人とは、到底思えなかった。取り敢えず仮の入居所と私物と貸与品の場所を聞いて、私はその場を後にした。
 艦娘の仮住まいは、天幕(テント)や鎮守府内施設の空き部屋等に割り振られているらしい。勿論個室という事はなく、共同生活だ。何も文句はないが。私の場合、空き地に張られた天幕の一つだった。同じ天幕の元で暮らすのは、同艦隊ということもあってか不知火だった。驚いたことに、彼女は木曾を行方不明と認識しており、木曾の生還を私から伝えることとなった。
「何故、貴方が知っているの?」
「何がだい」
「木曾の生死よ。伊勢に聞いたら行方不明と答えられたわ」
 何故かと私は考える。私が木曾が生きていると知ったのは、二日前、白木中佐と隊長と言われた男性との会話の中だ。丙艦隊を撃滅したのは伊勢達第四艦隊と見て間違いはない。第二艦隊は私を除いて生存を確認したと言っていた。故に少なからずあの時点で生きては居た。白木中佐の言うとおり、その場では生きていたという事なら今死んでいる場合は戦死と答えればいいだけだ。ならば生きているに違いない。そうして今、生きているとは言えない事情がある。
「姫」
「え?」
「私は白木中佐の会話を盗み聞きして木曾が生きている事を知った。丙艦隊に姫が居たからその戦闘の事情聴取を受けているんじゃないかな」
「確かに、そう考えると納得できるわ。じゃあ、この鎮守府の人で戦死した人って誰もいないのね」
 ぞわりと、背筋が粟立った。
「今、なんて」
「戦死したのって、他の鎮守府の人でしょう? 何でも救援に来たんだけど戦闘中に重症を負って、提督が介錯したらしいわ。そのせいで今憲兵に連れられて内地にいるんだとか。もうそろそろ帰ってきてもいいんじゃない」
「誰がそう言っていたの?」
「誰ってことでもないけど、青葉じゃないかしら、事の発端は」
「ちょっと、出かけてくる」
「青葉の元? 彼女は向こうの天幕にいるわ」
 私は天幕を出た
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