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黒魔術師松本沙耶香  薔薇篇
24部分:第二十四章
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第二十四章

「陽の庭からは全く使われていません」
「あえて陰の庭の薔薇を使っているのね」
「そうですね」
「陰を占め、そして陽は開けている」
「これにも何らかの細工があるのでしょうね」
「どうやら一連の事件の犯人はそうした中国の思想にかなり詳しいようね」
「そうですね、間違いなく」
 それは速水も確信していた。
「かなりのものだと思って間違いないでしょう」
「その人物が五色の薔薇を使って何を考えているかね」
「よからぬことではあるのは確かですが」
「それをちょっと占ってもらえないかしら」
「相手が何を考えているか」
「そうよ。それはわかるかしら」
「お安い御用です。それでは」
 懐からカードを取り出した。それは塔の正であった。
「・・・・・・よりによってこれですか」
 速水はそのカードを見て苦い顔を作った。
「どうやら相手が考えていることは私達にとって最悪の事態の様ですね」
「まさかとは思ったけれど」
 沙耶香はそのカードを見て言った。表情は変わらないが声には少し溜息がこもっていた。
「最悪みたいね」
「ですね」
 塔のカードはタロットの大アルカナの中では最悪であると言ってもいい。普通のカードは逆になれば意味が正反対に変わり、よいカードは悪く、悪いカードはよくなったりする。吊るし人のカードにしろその意味はよくもとらえることが可能である。月や悪魔のカードも同じだ。だが塔は違う。バビロンの塔を表わしていると言われているこの塔は破壊や破滅といった意味を表わしている。逆であってもそれ程意味は変わらない。何処までも最悪のカードなのである。占い師の中にはこのカードを見ただけで顔を顰めさせる者までいる程である。
「まさかそれが出るなんてね」
「相手はとんでもないことを考えていますね」
「ええ、それはよくわかったわ」
 沙耶香は速水がカードをポケットの中に収めるのを見ながら言った。
「破滅、かしらね」
「それが目標ならば」
「美女達は生贄ね」
「生贄ですか」
「そうよ、破滅の為の生贄よ」
 彼女は述べた。
「五人の生贄。それが全て奉げられた時に」
「破滅がはじまると」
「そしてそれを止める為には」
「まずは犯人を見つけ出すことでしょう」
 それが速水の出した結論であった。
「相手は攻める側です」
 まずはこう前置きした。
「攻撃点は向こうが選びます」
「そしてこちらはそれを防がなくてはならないと」
「事前にどう来るのかわかっていればいいのですが」
「それにはまず前提が必要ね」
 沙耶香はいきなり核心をついてきた。
「誰を狙うのか、そして相手は誰か」
「ここの館にいる全ての人にガードをかけますか?」
「それは無理よ」 
 この提案には残念そうに首を横に振った。
「そうし
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