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藤崎京之介怪異譚
case.5 「夕陽に還る記憶」
Z 同日 PM2:45
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り意外と仲良しさんなんじゃないかなぁ…。怖いから言わないけど。
 そんなことより、田邊が探してたのは、やはり昭和初期の小野家のことだった。
 田邊の話によると、小野家には朝実の他に、四人の子供がいた。尤も、この四人は小野夫妻が引き取った養子で、朝実の死後に縁組みをしたのだそうだ。
 夫人であるトミイは、朝実を産んで後病にかかり、子供を産めなくなっていたのだ。
「そんな話…佐吉さんとカネさんは一言も…。」
 俺は不思議に思い、ぼそりと呟いた。
「そうなんですよね…。でも、これって大戦中のことなんですよ。それも両親を亡くした子供ばかり。」
「でも眼鏡。その四人の子供って、佐吉さんが知らないくらいだから、墓も近くになかったんじゃないの?それっておかしいんじゃない?」
「まぁ…先があるので…って、眼鏡は止めて下さい。」
 田邊はにこやかにそういうと、それを見た美桜は顔を引き攣らせて前に向き直ったのだった。
 再び田邊の話へ戻そう。この四人は皆男子で、各々婿養子になったという。その一人、当時から続く名門である柳原家に入った耕介という人物が、田邊が今見ているものを書いたようだ。
「耕介氏によると、育ててくれた小野夫妻は、娘の死を自分達の責任と感じて、生涯その哀しみから逃れられなかったそうです。夫妻は朝実が結核になった時、海外にまで医者を探しに行ったそうですが、連れ帰った時には、既に娘は墓の中で、あまりのショックに床へ臥せったそうですよ。これは誰にも語ることがなかったそうなんですが、どうも自らに罰を与えるためだったみたいですね…。」
「罰…?」
「ええ。恐らく…他人に責められることで、自らを罰していたのかと…。そうすることによって、精神を安定させていたのかも知れませんね。」
 これが真実なら…全ての矛盾が解かれる。
「お兄様。それじゃ…佐吉さんとカネさんが言っていたこって、半分だけだったってことですわよね?」
「そうなるな。多分、二人も知らされてなかったんだろう。罰してほしかったんだ…娘を守れなかった愚かな親を…。」
 なんてことだ…。朝実は…こんなにも愛されていたと言うのに…。両親である秋吉とトミイは、必死になって医者を探したに違いない。他の家族を巻き込むことを避け、娘を一人病院へと送った時の気持ちは…きっと俺には分からないだろう。胸が張り裂ける思い…その表現すら足りない程だったんじゃないか…。
 それを…霊は利用したのだ。いや…利用するつもりで…作ったのかも知れない…。俺はそう考えると、はらわたが煮えくり返る思いがした。
「田邊君…真中君に連絡を。もう少しで到着するだろうから、正門に大丈夫そうなメンバーを集めておいてほしいと…。」
「分かりました。」
 俺の意を知ってか、田邊は何も聞かずに連絡を入れた。
「お兄様…大丈夫です
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