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黒魔術師松本沙耶香  薔薇篇
17部分:第十七章
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第十七章

「何も」
「そうよね、それは私もよ」
「見事なまでに何も感じませんね」
「そうね、誰なのか」
「只、薔薇を好むのはわかります」
「そして死体には凝ってるわね」
「そうですね、黄色い薔薇の時は特に意識はしていないようですが」
「出来るだけ美しくなるように仕向けているわね、犯人から見て」
「それはわかりますね」
「ただ、殺し方があまりにも違うわね」
「それに薔薇の選び方も」
 二人にはわからないことばかりであった。
「赤薔薇かと思えば次は黄色の薔薇」
「何か意味があるのかしら」
「それだけでもわかればいいのですが」
「薔薇にも種類は色々あるけれど」
 沙耶香は考えながら述べた。
「それでも。何も繋がりはないようね」
「ですね」
「余計にわからなくなってくるわ。何が何なのか」
「刺し殺したかと思えば次は毒殺」
「そして使った薔薇も違う」
「ところでこの薔薇はワインに入っていましたね」
「ええ」
「エレナさんはどうでしたか?」
「彼女は白よ」
 沙耶香は答えた。
「アリバイは私がちゃんと知っているわ」
「どういうことですか?」
「あの薔薇がワインに入れられたと思われる時刻ね」
 二人はそうしたことも調べていた。その魔術や占術を使った調査は警察の科学的な調査をも凌ぐものがあった。伊達にこの仕事をしているわけではなかった。
「私は彼女と一緒にいたから」
「そういうことですか」
「ええ、ワイン蔵でね」
 そう言ってにやりと口の両端で笑った。何かを食べて満足したような笑みであった。
「だから。彼女は無実よ」
「わかりました。では彼女以外ですね」
「ええ。段々と限られてくるけれど」
「メイドさんの中も一人は外れましたし」
「神父さんとエレナさんもね」
「じゃあお医者さんと二人の看護婦さん」
「メイドの子のうちの六人と」
「そしてコックの方が御二人。それだけですね」
「それを考えると犯人は限られるけれど」
「しかし。何故か見つかりませんね」
「私達がいるのにね」
 二人の術は絶大なものがある。それはお互いよくわかっていた。沙耶香も速水も絶大な力を持っている。その二人をして。犯人は姿を掴ませていないのであった。
「こうした閉じられた空間での連続殺人は」
「犯人は状況を楽しんでいます」
「次に亡くなるのは誰か。自分かも知れない」
「残された人々が怯えるのを楽しみながら」
「次の殺人を考えるのよ。ゲームみたいにね」
「はい。それで」
「次に何をしてくるのか考えるべきかしら」
「いえ、それは意味がないでしょう」
 だが速水はそれには首を横に振らなかった。
「駄目かしら」
「そもそも相手のパターンすらわかっていませんし」
「そうね」
「地道に調べるしかあ
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