暁 〜小説投稿サイト〜
黒魔術師松本沙耶香  人形篇
24部分:第二十四章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たけれど」
「我儘ね」
「我儘はね、女の特権なのよ」
 これは沙耶香の持論であった。
「少なくとも男のそれよりは許されるわ」
「許す許さないは相手が決めることよ」
「じゃあ決めさせてあげるわ」
 沙耶香はまた人形を切った。氷になり砕け散る。
「貴女に勝ってね」
「まだ勝てるつもりなのが凄いわね」
 シスターはその言葉を聞いてまた笑った。
「私に指一本触れられていないのに」
「それは簡単に出来るわ」
「嘘仰い」
 だが彼女はそれを信じようとはしなかった。
「その有様で」
「言っておくけれど傀儡を使うのは貴女だけではないわよ」
「どういうことかしら」
 それを聞いたシスターの眉がピクリと動いた。
「そのままよ。私も傀儡を使えるの」
「人形かしら」
「少し違うわね」
 だが沙耶香の返事は素っ気無いものであった。
「それはね。こういうことよ」
 突如としてシスターの後ろから声がした。
「!?」
「気がつかなかったかしら」
 後ろの床からもう一人姿を現わした。それは何と他ならぬ沙耶香自身であった。彼女は床からその黒い身体を出させてきたのであった。
「私の気配に」
「馬鹿な、こんなことが」
「そう思いたいでしょうね。けれどこれは現実のことなのよ」
 沙耶香は後ろをとった。その手にはやはり氷の剣があった。
「私が今ここにいることは」
「それでは今私が目の前に見ているものは」
「そう、私の傀儡」
「よく見て御覧なさい、私を」 シスターの前にいる沙耶香も口を開いた。笑みが誘い込む様なものになっていた。まるで魔界に引き込もうとする悪魔の様な笑みであった。
「私の影を」
「影・・・・・・まさか」
「そう、そのまさかよ」
 後ろにいる沙耶香が言った。
「私は影」
 次に前にいる沙耶香が。見ればその沙耶香には影がなかった。そして後ろにいる沙耶香にも。太陽の下にありながら影がなかった。
「影を傀儡に」
「ええ。傀儡は人形だけではないのよ」
「影も使えるの」
 二人の沙耶香は同時に語った。
「それに気付かなかったとは。迂闊ね」
「参ったわね。こんなことを仕掛けて来るなんて」
「考えたわ、私も」
「そう、私も」
 また二人の沙耶香が言った。
「どうしたら。貴女を出し抜けるかを」
「そして。考えたのがこれだったのよ」
「傀儡を使う私に対してあえて傀儡を見せたのね」
「ええ」
「そういうことよ」
 二人はそれを認めた。
「そして貴女はそれにかかった」
「逃れられぬ罠に。さて、いいかしら」
 二人はシスターに尋ねてきた。
「覚悟は」
「こうなっては覚悟するしかないようね」
 シスターは諦めた様な笑みを浮かべて頷いた。
「いいわ。やりなさい」
 そして言った。
「私の芸
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ