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ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか
独白
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 少女からバッグを受け取り、別れの言葉を言葉少なに交わしてから俺は夕食を買ってから二日振りとなる工房に向かった。
 その道中、北東のメインストリートから路地に入ろうとしたところで、俺はその人物にばったり出会った。

 「つ、椿さん…………」

 その人物は驚くことに袴姿の椿・コルブランドだった。
 角を曲がったすぐ目の前に現れた椿さんに俺は硬直。
 椿さんは突然眼前現れた俺に僅かに目を見開いて、俺と同じく硬直していた。
 脳裏を過ぎるのは、『金輪際手前に話し掛けるな』と親の仇を見るような目で言われたあの時。
 硬直から復帰した時に何を言われるかということに少し戦々恐々としながら、身構えていると、

 「………………」

 椿さんは俺の目をしばらく見据えてから、顔を背け、俺を避けるようにして歩き去っていった。
 虚をつかれて呆然としていた状態から回復し、振り向いた時には既に椿さんの姿はどこにもなかった。
 何だったのだろうかと首を傾げながら、俺は工房に向かうことになった。
 工房にすべての鉱石をいつもの箱に入れる。
 その箱が溢れた。
 昨日気ままに採掘した分と今日の分で一週間ぐらいダンジョンに潜る必要がなくなったみたいだった。

 「………………まあ、いいっか」

 別に多すぎて困ることはない。
 山盛りの鉱石をそのままにして、バッグと小型鶴嘴をストレージになおし、工房を出た。
 それからは夕食の干し肉をちびちび食べながら、工房の周辺を歩いて、新たな宿を探した。


    ◆ ◆ ◆


 翌朝、少し慣れない柔らかめのベッドでいつもより早く起床した。
 窓から差し込む日差しが暖かく、いい目覚めとなった。
 はずなのに、昨朝のように、いや昨朝のものより大きな黒々とした密度の濃い雲のようなもやもや頭の中心を占拠している。
 寝ている間に規模を増しているようだった。
 洗面所で顔を洗うも、水は顔の表面を流れるだけで、頭の中をすっきりさせることができない。
 もう一度寝れば今度は治るだろうかと、ベッドに横になって目をつむったけれど、俺を眠らせないようにするかのように頭痛が走った。
 その頭痛はまるで頭蓋を万力で締め付けられているような全体に鈍痛を感じるものだった。
 当然眠気なんて来なくて、起き上がる。
 すると、頭痛は消えた。
 何だろう、と考えても何も考えつかない。
 病気だろうか?
 医者に見てもらったほうがいいのか?
 ていうか、何でもポーションで治るこの世界に医者がいるのか?
 なら、頭からポーションを浴びればこの頭のもやもやは消えてくれるのだろうか。
 …………とは違うよな。
 このもやもやは肉体的なものではない気がして、思考を止める。
 すると、精神的なものに
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