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黒魔術師松本沙耶香  人形篇
19部分:第十九章
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第十九章

 次の日学園にやって来ると異変が起こっていた。また少女が失踪したのであった。
「私が捜査をしている間に」
 沙耶香はそれを絵里から聞いた。そして思わず心の中で舌打ちをした。
「やってくれるわね」
「それでその失踪した生徒ですが」
 絵里は明らかに狼狽が見てとれる顔で沙耶香に話していた。二人は今理事長室にいた。まだ理事長は来てはいない。
「斉藤玲子という娘です」
「ソフトボール部のマネージャーのですか」
 昨日会った娘だ。沙耶香にはすぐにわかった。
「ええ、御存知なのですか」
「昨日会って話をしたので」
 沙耶香はそう説明した。
「部活の最中に。可愛い娘ですよね」
「はい」
 絵里はそれに答えた。
「昨日家族の方から電話がありまして。まだ帰っていないと」
「それで失踪だと」
「たまにあるのです。生徒がその、いけない遊びを知って」
 つまり夜遊びをである。この年代の女の子には付き物の話だ。
「家を出ることが。けれどそんなことはしない娘ですし」
「一緒に帰った生徒とかはいないのですか?」
「まだ調べていませんが。家には帰っていないそうです」
「誘拐とかの可能性もありますよね」
「それも考えていますが。やはり」
「私の事件と関係があると」
「私はそう思います」
 絵里は暗い顔でそれに答えた。
「どうでしょうか」
「おそらくそうでしょうね」
 沙耶香もそれに言葉を返した。
「これは私の勘でまだ調べてもいませんが」
「そう思われますか」
「この学園で続けて失踪事件が起きていますね」
「はい」
 その解決の為に沙耶香を呼んでいるのはもう言うまでもないことであった。
「そしてまた。やはり疑わしいでしょう」
「便乗犯の可能性もあるでしょうが」
「その可能性は否定出来ませんが。まずは理事長とお話しましょう」
「わかりました」
 絵里はそれに頷いた。そして理事長を待った。
 暫くして理事長が部屋に入って来た。ある程度予想はしていたが強張った顔をしていた。
「お早うございます」
 理事長の方から挨拶をかけてきた。
「は、お早うございます」
「話は聞いています」
 もう既に知っているようであった。これも予想通りであった。
「今度は二年の生徒ですね」
「はい」
 絵里がそれに答える。
「家には帰っていないとのことです」
「それだけでしたらまだ話はいいのですけれどね」
 理事長は暗い顔でこう述べた。
「問題はその失踪の経緯です」
「はい」
「例によって何もわかっていません」
「そして私の仕事であると」
「この件に関しても御願い出来ますか」
「御願いされるも何も私の仕事ですから」
 沙耶香はこう返した。
「これまで通りやらせて頂きます。それで宜しいですね」
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