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雲は遠くて
90章 美樹や信也、陽斗のライブへ行く
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も、大好き!気持ちを明るくしてくれるし!」

 美樹の隣の真央もそういった。

「あっはは。美樹ちゃん、真央ちゃん、ありがとう!」

 信也は、テーブルの向かいの美樹と真央に、そういって、わらった。

・・・あれから、もう、2年が過ぎるのか・・・。
おれの目の前で、可愛(かわい)微笑(ほほえ)む美樹ちゃんだけど。
おれは、美樹ちゃんに、失恋したという(にが)い経緯があるわけだけだ。
でもさあ、男女の仲の不思議さというのかな、
男には、おれのように、心の中に、マドンナというのか、
女神のような、運命的な女性が、いつまでもいるってことが、あるものなんだろうか?
たぶん、おれは、美樹ちゃんがいたから、おれは山梨から東京に出てきたって、言えるわけで・・・。
美樹ちゃんがいなかったら、おれの生き方は、まったく違う生き方だったと言えるわけで。
やっぱり、考えてみると、美樹ちゃんは、おれにとって、特別な女性なんだよなぁ。
いまでも、きっと、いつまでも・・・。
お互いに、いつまでも、仲よく、いい音楽活動をやって行きたいよね・・・

 信也は、冷たい生ビールを飲みながら、そんなことを、ふと思っていた。

 1階から2階まで、高さ8メートルの吹き抜けの会場は、一瞬、静まった。

 32歳になる、店長の佐野幸夫が、ライトアップされた、ステージに立った。

「みなさま、こんばんは。ライブ・レストラン・ビートに、お越しいただきまして、
誠に、ありがとうございます。
今夜のライヴは、本格的で、洗練されたジャズで、わたしたちを楽しませてくれる、
松下カルテットのみなさんです!」

 佐野幸夫がそういうと、広いフロアは、拍手と歓声に包まれる。

 佐野幸夫の彼女の、27歳の真野美果も、ステージ直近の、
信也たちと同じテーブルの席にいて、幸夫の司会を、やさしい眼差しで見つめている。

≪つづく≫ --- 90章 おわり ---

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