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ロザリオとバンパイア〜Another story〜
第37話 初めての……
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、綺麗な歌声だったからさ』

 ジャックは、燦の歌を思い出しながら、笑顔でそういった。確かに相手側からすれば、たまったものじゃないだろう。聞こえている範囲全てが攻撃範囲だからだ。それに耳では聞き取れない高音を使う、とも記憶しているから、見えない攻撃に、聞こえない歌。

 うん、怖がったとしても不思議じゃないだろう。だけど、ジャックは、不快感が拭えない。涙を流している少女を捨てる親がいると言う事に。


 そして、その言葉を訊いた燦は目に涙を溜めながら、受け取ったボールペンを走らせた。


<どうも…ありがとうございます……>


 そのメモ帳を見せた。メモ帳といってもそれなりに大きく、燦の顔半分くらいはある。そのメモ帳で顔を…赤くなっている顔を隠している姿は、なんとも微笑ましいものだった。


『……あははは どういたしまして。さあ 君はこれからどうする? ここにいても、危ないし……暫く俺と来るかい?』
 
 とりあえず、燦の意思には尊重する。まだまだ、子供とは言っても女の子だ。男と一緒に行動…はちょっと、抵抗があるのかもしれないから。

 何より、さっきの男達の事を考えたら、男性不信になっても不思議じゃないから。



 だが、そんなジャックの心配をよそに燦は。

<はい…! 私には…もう…頼りがありません。すみませんが……どうかよろしくお願いします>

 燦は、即断した。話し終える前から、ペンを走らせていたから。抵抗がある、とか 嫌な感じがする、とかは 全く考えていないようだった。

 ただ、迷惑にはなりたくない。 その1つだったようだ。

『……よし判った。迷惑なんて感じるわけ無いだろう? オレは君の味方だよ。不快じゃなければ 頼ってくれていいさ』

 そう言って笑う。

「ッ!!!」

 燦は……、次に驚いた表情をした。そして、それと同時に目から一筋の涙が零れ落ちる。

「ッ…ッう……ううッ……」

 声は必死に殺しているが、涙が出る事は止められず、限りなく声を押し殺しつつ、泣き出した。


 なぜ、涙を流しているのか。

 彼女の事を知っている、と言う以前に 心を読むことのできるジャックにはすぐに判った。








《今まで生きてきて…こんなに自分のことを思ってくれているひと……、味方だって 言ってくれたひとは……1人もいなかった。 親に見捨てられたときは… 必死に戻ってきてくれるようにいつまでも願ったが……。家に帰ってきてくれなかった……。それどころか……売られたんだ……。……物心ついた時もずっと…1人ぼっちだ……そう思っていた… でも……でも……このひとは…  会ったばかりだって言うのに……助けてくれて……やさしくしてくれて…
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