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黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
15部分:第十五章
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第十五章

「それでは早速」
「お好きですね」
「好きよ」
 その琥珀色の目を輝かせていた。
「かなりね」
「そうですか。それでは」
「今日の話はこれでね」
 終わるというのであった。
「また会いましょう」
「はい、それではまた」
「私もこれで」
 速水もであった。彼もまたモンテスに告げてきたのだった。
「私の捜査をはじめさせてもらいます」
「別々にされるのですか」
「それでも会えるから」
 いいという沙耶香であった。
「大丈夫なのよ」
「はい、それでは」
 二人は同時に席を立った。もうコーヒーは飲んでいる。
「これでね」
「また御会いしましょう」
 こうして二人はモンテスと別れた。そして沙耶香もまた速水に対して別れの言葉をかけるのであった。
「それではね」
「美しい方を見つけに行かれるのですね」
「そうよ」
 既にそれは決めているのだった。目がまた細められていた。
「これからね。だから貴方ともまた」
「私は何時でも待っていますから」
 速水もまた微笑んでみせた。それは決して敗北を認めているものでも待っているものでもなかった。当然ながら寂しさを感じさせるものでもなかった。
 自然の、来るべきものを確かに感じている微笑みだった。その微笑みで語るのであった。
「そういうことで」
「気が向けばね」
 またこう速水に言う彼女だった。
「そうさせてもらうわ」
「ええ、ではまた」
「それではね」
 こうして速水とも別れた。そのまま巴里の街を歩いていく。そうしてその中で。
 沙耶香が今いるのはカルチェ=ラタンである。
 その小道の左右にピストロが立ち並ぶ場所を進んでいく。やがて彼女の前にクリーム色のコートを着た栗色の髪の美女が現れた。如何にも学生といった感じの美女であった。鼻は高く背も高い。モデルと言っても通用するな、そうした美女が出て来たのである。
 その彼女の前に来てであった。沙耶香はすぐに声をかけた。背は彼女の方が高かった。
「少しいいかしら」
「私かしら」
「そうよ」
 微笑んで彼女に告げるのであった。
「貴女に用があってね」
「用とは?」
「見たところ学生ね」
 沙耶香はまた彼女に告げた。笑みは妖しいものになってきている。
「そうね」
「ええ、そうだけれど」
「雰囲気でわかるわ」
 笑みは見透かした様なものになっていた。
「それでね」
「雰囲気でわかるというの」
「ええ。それも美大ね」
 沙耶香はそこまで見ているのだった。
「そうなのね」
「その通りよ。そこまで見ているのね」
「そして」
 沙耶香の言葉は続く。
「今は一人ね」
「それは見てわかるのではなくて?」
 美女は今の沙耶香の言葉にくすりと笑って返した。
「そんなことは」

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