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藤崎京之介怪異譚
case.4 「静謐の檻」
W 同日 PM2:35
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たね。で、その後は何か調べたのか?」
 俺がそう問うと、相模は再び小声で答えた。
「調べたは調べたんだが…何一つ糸口が掴めなかった。それでだ…一番有力な情報だと、どうも先代の尚輝氏と、左にいる仲居頭の吉岡さん、中央に座る庭師の金井さんは、龍之介氏の失踪直前に、三人して龍之介氏に会っているようなんだ。だが、どんな話をしていたのかは誰も知らないってんだよ。変じゃないか?ま、ここを辞めた仲居達に聞き回ってこれだけだ。」
 俺と相模がこそこそ話ているのが気に入らなかったのか、三人は申し合わせたかのように立ち上がり、仲居頭の吉岡さんがこう言った。
「もう失礼します。この様な茶番には付き合い切れませんので。皆さん、仕事に戻りましょう。」
 それで三人は山之内氏が止めるのも聞かず、そのまま出て行ってしまったのだった。ただ、一番右の席に座っていた女性だけ、少しおどおどしながら軽く会釈をしたのが何となく引っ掛かりはしたが…。
「申し訳ありません…。」
「いえ、貴女のせいじゃありませんから。」
 俺はそう言って苦笑したが、山之内氏は溜め息を吐いて肩を落としていた。そんな中、俺は嫌なことに思い至って、それを相模に言ってみた。
「なぁ、相模。あの三人…いや、尚輝氏を入れて四人か。龍之介氏が失踪することによって、何か得をしたってことはないか?」
「それは俺も考えた。だが、尚輝氏はともかく、他の三人にはこれといってない。」
「それは現在でもか?」
「…?京、一体何が言いたいんだ?」
 俺は少し迷った。これを言って良いものかと…。だが、これは言っておかなければ、何か悪いことが起こるんじゃないか…そんな予感めいたものがあったのだ。
「確か人が失踪した時、七年間音信不通で生きている確証がない場合、法的に死亡が認められる筈だ。当時がどうとかでなく、その後に…」
「藤崎先生、まさかあの三人を疑っておられるのですか!?そんな…有り得ません!」
 俺の言葉に山之内氏は憤慨した。嫌われているとは言え、山之内氏にとっては先々代からこの旅館で働いてもらっている家族同然の人達だ。彼女がこう言った態度を取ったとしても、別に驚くようなことじゃない。
「分かっています。ですが、龍之介氏が亡くなったと言う確証があるでなく、ましてや生きていると言うことも…。あらゆる視点から調査する必要があるんです。」
「私は藤崎先生に、この異常な出来事を解決して頂ければ良いのです。義父については関係ないと…」
「いいえ。これは完全に龍之介氏の失踪と関係してます。これは嫌がらせのレベルじゃないですし、第一、これで終わりだとは思えません。」
「それは…どういう意味です…?」
 俺の言葉に、山之内氏は怪訝な表情を浮き彫りにさせた。横にいる相模も、眉間に皺を寄せながら俺を見ていた。
 その時、本館
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