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藤崎京之介怪異譚
case.4 「静謐の檻」
T 6.27.PM2:14
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を覆っているようにも感じていた。それが何なのかは分からない。恐らく、この後に分かることなんだろうが、あまり良い感じがするものじゃなかった。
「失礼します。」
 俺が窓から景色をぼんやり眺めて考えていると、ノックの音と共にドアが開き、室内へと田邊が姿を現した。
「よくここが分かったな…。」
 ここは団員達とは違う階だ。他にも幾つか部屋があるのだが…。
「仲居さんに聞きました。それで先生、この後のスケジュールなんですが、夕食前に打ち合わせをしておきたいんですが。」
 俺は少し考えた。まだ三時前で、本当は四時前後の到着予定だったのだ。ここでさっさと打ち合わせを済ませれば、後は明日まで全員自由になる。
「そうだな…。それじゃ悪いが、各パートの連絡員を呼んでくれ。他の団員は、ミーティングが終わるまで待機だ。」
 田邊はそう聞くと、直ぐ様「分かりました。」と答えて飛び出して行ってしまった。田邊のやつ…自分がフリーになりたかっただけじゃないのか?それから数分後、俺の部屋に十人程が集まり、直ぐに打ち合わせが始まった。まぁ、打ち合わせとは言っても、どこで何を練習させ、どこまでで全体を合わせるかが主に決めなきゃならないけとだ。細かい楽譜上の指示は、全体練習か俺が回って指示しまくるしかないからなぁ…。
「しかし、藤崎先生?我々通奏低音群は一部にソロもありますし…単独練習は厳しいかと。」
「真中君。それは分かってるんだけど、パート練習の場所が思ったより狭くてねぇ…。旧ホールの方で練習するから、最初はどうしても単独練習しかないんだ。」
 練習は取り壊し間近の旧ホールで行うことになっている。こともあろうにこの旧ホール、オーケストラのパート練習が出来るような設計にはなってなった。どうやら、出来上がっているものをそのまま演奏するためだけに作られたらしい…。
 何せ…ホール以外は、控え室と他5つの小部屋があるだけなのだ。
 ホール自体は大小二つあるんだが、小ホールは只今使用禁止。古いため一部の床が抜けているのだそうで、とても使い物にはならんのだと…。大ホールは以前に修復工事をして床などを張り直したため、こちらは充分使用可能だそうだが…。
 そのため、最初だけ各パートは五つの小部屋(一部は倉庫だったようだが)で練習するしかなかった。取り敢えず防音にはなっているようだが…まぁ、文句は言えないか。
「でも…コーラスはどうするんですか?旧ホールじゃ、とてもパート練習は出来ませんよね?」
 田邊が心配そうに聞いてきた。そんな田邊に、俺は一つの提案をした。
 山之内氏に言われたことなんだが、この旅館の裏手に、現在では使用してない旧館がある。山之内氏は、良ければその旧館を使っても良いと言ってくれていたのだ。確かに、そこは音楽専用に建てられた訳じゃないが、背に腹はかえられな
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