第七章
[8]前話
「夢、じゃないですね」
「現実のことなんですよね」
「じゃあ近高さんの娘さんも」
「ひょっとしたら」
「そうかも知れないです」
戻って来るかもしれない、その人は二人に話した。
「本当に若しかしたらですが」
「そうですか」
「何か信じられませんね」
「この日が来て欲しいって思っていましたけれど」
「本当に戻って来るなんて」
とてもとだ、表情と言葉に出していた。
「嘘みたいです」
「夢を見ているみたいです」
「私もそう思います、ですが本当のことです」
その人も嬉しそうに話した。
「お喜び下さい」
「では」
「その時に」
「はい、娘さん達が戻ってこられたら」
その攫われた人達がだ、あの国によって。
「お祝いしましょう」
「親娘の再会に」
「そのことも考えておきましょう」
支援者の人も言う、そして。
二人は願い続けた、さらに。それこそ一日も一瞬も休むことがなかった。そしてその結果なのか。
攫われた人達の中に近高さんの娘さんの名前もありだ、その人も帰されることになった。そうしてであった。
娘さんが家に帰って来た時だった。近高さん夫婦は何十年も経っていたのですっかり歳を取ってしまった娘さんをその年老いた両手で抱き締めて。
その場でお互いに泣いた、支援者の人達もその光景を見て泣いた。
その時を見てだ、正蔵は泣きながら侑枝に言った。勿論二人も支援者の中にいた。
「よかったな」
「そうね」
「毎日神様や仏様にお願いして」
「あちこちの神社やお寺を回ってね」
「キリスト教や天理教の教会も回って」
「長い間続けてね」
二人で話すのだった。
「本当によかったわね」
「神様、仏様が救ってくれたんだな」
「そうよね、神様も仏様もいてくれるのね」
「いるからだよ」
まさにだ、それが為にというのだ。
「娘さんも攫われた人達も取り戻してくれたんだよ」
「そうよね、お願い通じたのかしら」
「そうかもな、生きていてよかった」
正蔵は泣きながらこうもだ、侑枝に言った。
「神様も仏様もいてくれているんだ」
「そして困っている人達、苦しんでいる人達を救って」
「最後には。正しいことになるんだな」
二人でしみじみと思うのだった、何十年ぶりかの親娘の再会を見つつ。今ここに願いが通じたことをこれまで参拝した神社や寺、教会の神や仏達に感謝して。
祈りは通じる 完
2015・4・19
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