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ミステリアスなピアニスト
第六章
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「何か猫のことを思わないと」
「テンションが低い」
「そうなの」
「それでなの」
「いつもは」
「そうなんだ、スイッチ入らなくて」
 それで、というのだ。
「テンション低いんだ」
「それでなんだ」
「つまりは」
「普段はどうにも」
「そうなのね」
「うん、やっぱりね」
 また言う圭一だった。
「僕は猫がいないと、猫のことを考えられないと」
「駄目」
「そうなんだ」
 このことはだ、圭一は少し苦笑いで述べた。
 そうしてだ、学友達にあらためて言った。
「じゃあ後はね」
「後は?」
「後はっていうと」
「皆に御飯をあげて」 
 今もピアノの周りにいる猫達をいとおしげに見つつの言葉だ。
「それでね」
「うん、それで」
「それでよね」
「お茶飲もう、まだまだ話したいことがあるんだ」
 こう言うのだった。
「猫のことでね」
「うん、じゃあね」
「猫のことね」
「もっと聞かせて」
「これまで以上に」
「そうしてね」
 友人達も圭一の誘いに笑顔で頷いた、そうしてだった。
 圭一が出してくれたお茶にお菓子を楽しみつつ彼の話を聞いた、その話はとにかく猫のことばかりだった。
 その猫の話を聞き終えてからだ、友人達は圭一の家を後にした。そうして夕刻の道を歩きつつお互いに言うのだった。
「何ていうか」
「そうよね」
「田中君ってな」
「無口かっていうとそうじゃない」
「無趣味でもなくて」
「好きなものもある」
「そうした人なのね」
 普通の人と同じく、というのだ。
「つまりは」
「それで」
「しかもそのピアノの秘密は」
 天才とまで謳われているそのことの話にもなった。
「猫にあった」
「そういうことね」
「つまりは」
「いや、猫がピアノに影響する」
「面白いよね」
 彼等はこのことにも興味を持つのだった、とにかくだ。 
 圭一は猫達に囲まれつつピアノを楽しみその周りにあるアクセサリー等は猫ばかりだった。そして普段は無口でもだ。
 猫のことになるだ、それこそ常にだった。
 ぱっと明るくなり話しだした、その彼を見てだ。
 周り、クラシック関係者も含めて誰もが言うのだった。
「いや、一見静かで」
「それがな」
「実は違う」
「面白いね」
「実にそれが不思議で」
「ミステリアスだよ」
 それが彼だというのだ、しかし彼自身はその周囲の言葉を意に介することなく相変わらずだった。猫と楽しむ日々を送りピアノも楽しんでいた。
 そしてだ、ハイテンションで言うのだった。
「猫は最高だよ、猫がいるから僕はピアノが出来るんだ」 
 こう言ってだ、天才ピアニストの名を欲しいままにしていっていた。そこがかえって彼をミステリアスだという評判にさせていたがこのことも気にしていな
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