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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第二話 平和な平凡の終わり
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 昼休憩も終わり、また三時間の退屈な授業を受ける。

 それも終わると、いよいよ下校の時刻。

 一日の学業が終わりを告げ、部活に赴く者、教室に居残って取り留めもない話に花を咲かせる者、さっさと家路を急ぐもの。

 琉は後者のさっさと下校してしまう者の部類だ。颯はフェンシングの練習があるのだとかで、別れだけ告げて体育館へと行ってしまった。

 琉は部活に入っていないのかと聞かれれば、否、一応だが部活には入っている。琉が所属する『文芸部』は主に小説の執筆やイラストを描いたりするだけの部活で、基本的には自由参加なのだ。

 そのため幽霊部員も多く存在し、琉もその一員となりつつある。一か月に一度は部室に顔を出す程度だが、別にお咎めもない。まぁそれは、琉にあまり下級生も上級生も近づきたがらないという哀しい理由があるわけだが。

 琉は学校の隅に設置されている自転車置き場から自分のママチャリを出し、一人で帰途に着く。

 帰っている途中に、下校途中の小学生に指を差されたり、女子高生がコソコソと耳打ちをし始めたり、散歩中であろうコーギーに物凄く吠えられたりしたが、これらはいつものことなので割愛。

 約四十分間の長い道程を自転車で走りきり、琉はようやく自宅へと到着する。

 朝のようにママチャリを家の自転車置き場に停め、カゴの中の学生鞄を持って玄関へと向かう。

 玄関まで行く途中、石垣から隣に住んでいる泉谷さんが「お帰りなさい琉くん」と挨拶をしてきたので、軽くこれに返す。隣の泉谷さんはご近所付き合いが長いせいか、琉のことをあまり怖がらない。むしろ息子のように可愛がってくれていて、よくお菓子などをくれるのだ。

「ただいまー」

 玄関を開けながら言うと、家の奥から「お帰り〜。今日も早いわねー」と母の声が聞こえてきた。

 母の皮肉ともつかない言葉を無視して、琉はさっさと階段を上がり、自分の部屋へと向かう。

 琉の部屋は階段を上がってすぐ左だ。琉は自室の扉を開け、後ろ手に扉を閉めながら学生鞄を机の上に放り投げる。

 琉の部屋はなんというか、とてもシンプルだ。六畳あまりの室内にはベッド、その横にあるサイドテーブル、勉強机、本棚とクローゼットくらいしかない。しかも本棚にはあまり本は置かれておらず、とても寂しい風景だった。

 琉は学生服のブレザーだけを脱いで雑に床へ放り投げると、カッターシャツを着たままベッドに寝転がる。

 そしてネクタイを緩め、一息ついたかのように深くため息を吐き出した。

 琉の今の格好は、白いカッターシャツに緩んだ千鳥柄のネクタイ、灰色の学生ズボン。

 わざわざ部屋着に着替えるのもおっくうなのか、カッターシャツが皺になるのも気にしない様子で、ベッドの上をゴロ
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