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短編集
艦隊これくしょん
Верныйの朝
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 特型駆逐艦暁型二番艦『Верный』の朝は早い。
 誰よりも早く起きる。
 彼女はなんのために早く起きるのか。
 それは誰よりも早く起き、自分たちを指揮する提督の所へ行くためだ。
 一緒の部屋で寝ている姉の『暁』、妹の『雷』、『電』を起こさないように静かに部屋を出る。
 廊下へ出ると、もう夏だというのにひんやりとしていた。
 ドアを静かに閉め、提督がいるであろう自室に足を向けた。




 提督(♂)の自室は執務室からそう遠くない場所に設置されている。
 理由は様々あるが、一番大きな理由が緊急時にすぐ指揮を執ることが出来るからだ。
 それ故、艦娘たちが提督の自室に遊びに来る事も多々あった。
 提督自身も艦娘が自分の部屋を訪れる事に関して、口煩く言わず、ただ黙って歓迎した。
 その為か提督の部屋は何時でも鍵が開いており、時偶金剛などの提督を慕っている艦娘たち、所謂「提督LOVE勢」が提督の部屋に忍び込んで、一緒に寝ていることもある。
 Верныйも提督(彼女は司令官と言っている)の事が(恋愛的な意味で)好きなため、毎朝提督の部屋に忍び込むのだが、いつも金剛や加賀等に先を越されている。
 そのことをいつもCOOLな表情の下で苦々しく思っており、彼女たちが起きて忍び込む時間よりも前に彼の布団に忍び込む事にしたのだった。
 それが現在まで続く習慣となっており、提督LOVE勢の中ではВерныйを最大のライバルと見る者も少なくない。




 提督の部屋の扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開く。
 そして、軽く中を確認すると、ベッドから彼のいびきが聞こえていた。

 (よし、誰も来てない)

 心の中でそう呟くと、彼女は「抜き足差し足忍び足」と小声で呟きながら、提督が寝ているベッドに近づく。
 そして、毛布を捲り、もそもそと彼の隣に潜り込む。
 身体を彼提督に密着させると、彼の心臓の鼓動が密着した彼女の耳に聞こえてくる。
 その事に満足感を得ながら、彼女は(Хорошо)と心の中で呟き、再びやってきた睡魔に身を委ねた。





 「んぅ……」

 寝苦しさを感じて、提督は目を覚ました。
 いくら明け方が涼しいとは言え、日が出てくればすぐに気温は上がる。
 それが誰かが自分にくっついていなければ、ある程度無視できるが、誰かがくっついていると無視できない。
 提督は身体を起こそうとして、自分に誰かがくっついている事に気がついた。

 「誰がくっついているんだ……」

 なんとも言えない暑さ、くっついていることによる発汗が原因の不快感の源を特定すべく毛布をめくると、そこには幸せそうな寝顔のВерныйが居り、彼にしっかりと抱きついていたのだった。

 「はぁ……、仕方がないか」

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