暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
忘れ去られた悪意
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れがさざ波のように押し寄せ、それに眉をひそめるのも一瞬。熱い激痛が突き抜け、堪らず呻き声を上げてユウキは床に膝をついた。

「――――両の腕、ともに、二箇所を……ハァ、突いたのに、それでも剣を、落とさないのは…さすが、だな。絶剣」

しゅーしゅーと。

低く乾いた、それでいて金属質な響きのある声が、直接聴覚にねじ込まれる。

僅かに震える首筋を叱咤して振り返るのと、少女が突入した窓のすぐ脇――――彼女から見た死角の暗がりから揺らめくように一人の影が吐き出されたのはほぼ同時だった。

一件、(プレイヤー)とは思えなかった。アバターの輪郭が奇妙にぼけているのだ。懸命に注視し、ようやくその理由を悟る。

全身を覆う濃い灰色のフードマントがぼろぼろに毛羽立っている上に、ユウキが突っ込んだことと、ユウキの持つ光剣のビームサーベル部が生み出す高熱によって生み出された風にマント全体が簡単になびき、まるで小動物の群れのように不規則に動いているように見えるからだ。スナイパーが背景に完全に同化するために身に着けるギリースーツというものを聞いたことがあるが、あれはそれのマント版――――《ギリーマント》とでも言うべきか。

だが――――

「……なん、で、絶剣の名前を…………」

小さな疑問が、無意識のうちに口から零れ落ちる。

その名はSAO――――今のALO上空に浮かぶ新生アインクラッドではなく、旧アインクラッドでしか流布していないものだ。SAO内での情報は一切が門外不出の機密扱いとなっているので、それを知っているということはこのボロマントは――――

「……SAO、生還者(サバイバー)……なの……?」

答えはなかった。

ただ、不気味な沈黙が返された。

重い一拍を置き、再び金属質でどこか無機物的な印象を受ける陰々とした声が響く。

「生、還……だと?……は、は、笑わせる。俺は、還ってきてなど、いない。俺は、今でも、あの場所にいる」

ぞくり、と。

少女の背に得体のしれない悪寒が突き抜ける。

「何も、変わっていない。何も、終わっていない。イッツ・ショウ・タイム」

そのたどたどしい英語を聞いた瞬間、ユウキの脳裏に激震が走った。

この切れ切れな喋り方、そして相対した者に血を連想させる真っ赤な双眼。

「《赤眼の》……ザザ――――!!」

喘ぐような言葉が漏れた直後、ボロボロのマントの裾が勢いよく翻った。
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