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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十話 急転
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計画は用意してあります」
今度はカールセン提督が息を吐いた。

嘘では無い、脱出計画は有る。そして多分間に合うだろう。間に合うように作ったのだから。だがそれだけに計画は非人間的なものになった。計画が発動された時点でイゼルローン要塞のエリア単位に輸送船に乗り込む。今の時間なら子供達は学校に行っている。彼らは家に戻る事は無い、学校から直接輸送船に乗り込む事になる。

子供だけではない、親も職場から、或いは家から直接輸送船に乗り込む。彼らが合流するのは安全な場所に辿り着き輸送船を降りた時だ。人を人として扱わず物として扱う、そうでなければ短時間で軍民五百万人を脱出させる計画など作成不可能だった。

「問題はこの後ですな。フェザーン方面軍は無事に撤退出来るのか、次の防衛線を何処に布くか……。いや、次が有るのか……」
「……」
ヤン提督が私を見た。
「グリーンヒル大尉、ハイネセンとの間に通信回線を開いてくれ。こちらの状況を説明する」
「はい」
多分ハイネセンもフェザーンも大変な騒ぎになるだろう。一体同盟はどうなるのか、このまま滅んでしまうのだろうか、嫌な予感が胸に満ちた。



宇宙暦 799年 3月 12日  フェザーン回廊 同盟軍総旗艦  リオ・グランデ  ドワイト・グリーンヒル



「イゼルローン要塞を放棄する?」
ビュコック司令長官の声が幾分高くなった。スクリーンにはボロディン本部長の渋面が映っていた。
『帝国軍はイゼルローン回廊に移動式の要塞を持ち込んだようです。ガイエスブルク要塞、性能はイゼルローン要塞に匹敵します』
要塞を運んで来た? あれはブラフでは無かったのか……。リオ・グランデの艦橋の彼方此方でざわめきが起きた。

「イゼルローン要塞の持つ優位は失われた。要塞に拘れば損害が増えるだけだというのですな」
私が問うとボロディン本部長が頷いた。
『それも有る。だがヤン提督が懸念していたのは帝国がイゼルローン要塞の占拠では無く破壊を目的としているのではないかという事だった』
破壊? ビュコック提督も訝しげにしている。

『具体的に言えばガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけるのではないかと……』
「馬鹿な、そんな事になれば……」
気が付けば声が震えていた。
『大惨事だ。衝突時の衝撃、崩壊によって軍民問わず大勢の人間が死ぬだろう。核融合炉も無事では済まない、放射性廃棄物の拡散による深刻な放射能汚染が発生する恐れもある。そうなれば生き残った人間にも深刻な影響が出るだろう』
「……」

『意表を突かれたよ。まさか帝国が移動要塞を造るとは思わなかった。正気かと思ったがヤン提督の話を聞いて納得した。兵力において帝国は同盟を圧倒する。である以上帝国にとってイゼルローン要塞は必ずしも必要不可欠
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