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チュッタイ
第四章

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「幾ら何でもね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
「借りものなのね」
「汚したり破いたりしない様に気をつけてるわ」
「そうなのね、けれどね」 
 タニヤは今もそのチュッタイをじっと見ている、そして言うのだった。
「こんな奇麗な服なら」
「あんたも着たいでしょ」
「私決めたわ、絶対にね」
「結婚式の時は」
「チュッタイ着るわ」
 姉が今着ているそれをというのだ。
「絶対にね」
「そうするのね」
「いや、本当に普段のお姉ちゃんとは違うわね」
「やっとそこで私のことを言うのね」
「天女みたいよ」
「チュッタイを着たら」
「そう見えるわ」
 まさにだ、天女にというのだ。
「いや、見違えたわ」
「そうでしょ」
「服が人を変えるのね」
「普段はラフな洋服だけれどね」
 このことはタニヤも同じである、二人共ズボンと半袖のシャツばかりだ。
「それでもね、こうした服を着ると」
「別人にっていうのね」
「なるわ」
「そうよね、いや本当にね」
「こうした時しか着ないけれど」
「いざ着たら」
「いいものよ、じゃああんたも結婚式の時はね」
 その時のことをだ、また言ったゴーラだった。
「このチュッタイ着るのよ」
「そうさせてもらうわね」
「その時はあんたもこうなるから」
「天女みたいになるのね」
「そうよ」
「じゃあ絶対になるから」
 チュッタイを着てとだ、タニヤはそのチュッタイを着ている姉に約束した。ゴーラはそのチュッタイを着てそのうえで式に出た。そして十年後タニヤもそのチュッタイを着た。その時の彼女も天女に変わっていた。


チュッタイ   完


                        2015・7・24
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