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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。
初めて見る表情
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キャスター、北斗はお前達の敵マスターかサーヴァントの攻撃を受けたのか?」

「え? あっ、はい。緑ぃの……じゃなかった、敵のサーヴァントの……」

「毒矢か毒のついた刃物で傷つけられたんだろ? 分かっている……僕の『専門分野』だ」

 さっきのマスターの質問は単なる確認だったのだろう。キャスターの言葉を途中で遮ったマスターは、北斗の傷口についた血を自分の指につけて舐めて……って!?

「マスター!?」

「貴方!? 一体何を!?」

 私とキャスターが驚きの声をあげたのは同時だった。

 マスターは今さっき、北斗は毒に侵されていると自分で言った。それなのに毒に汚染された血を舐めるだなんて何を考えているの!?

「……ぐっ! こ、これは……自然界の毒を魔術で強化したものか……」

 毒に汚染された北斗の血を舐めたせいで自分も毒に侵されたマスターは、顔中に脂汗を浮かべて苦しそうに呼吸を乱しながらも冷静に毒の性質を分析していくんだけど……どうなってるの? 何でサーヴァントの毒を自分から口にしてそんなに冷静でいられるの?

「毒性を強化した魔術はケルト神話系の魔術……ドルイドの神秘で、原型となったのはイチイの毒、か。……よかった。この程度の『凶悪なだけ』の単純な毒だったらすぐに解毒ができる」

 顔色が北斗と同じくらい青くなっていても、それでもマスターは不敵な笑みを浮かべるとその口を高速で動かした。

「ーーー。 ーーー。 ーーー。」

 マスターの口から紡がれるのは、あまりの早さでもはや人間の耳では聞き取れない音となった「呪文」だった。

 コードキャスト。

 今のマスターの体、魔術師がこの電脳空間で活動するための第二の体に記録された、この世界に「奇跡」を顕現させるためのプログラム。

 マスターの体に電気回路のような光の筋道、「魔術回路」が浮かび上がって魔力を産み出し、それとほとんど同時に呪文の詠唱も完了して現代の魔術師の魔術、コードキャストが発動する。

「【recover();】!」

 コードキャストが発動した瞬間、マスターと北斗の体が一瞬光に包まれ、光が収まると二人の顔色は元の血色に戻っていた。……よかった。あの様子を見ると解毒は無事に完了したみたい。それによく見ると北斗の二の腕にあった傷口もなくなっている。

「……あ、あれ? と、時行……?」

「ああ、そうだよ。無事でよかった」

 解毒が完了して意識がはっきりした北斗にマスターは優しい笑顔を浮かべて頷いた。

 その笑顔を見れば北斗が無事に助かったことを心から喜んでいるのが分かり、それは私が初めて見るマスターの表情だった。
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