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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第121話 人生は夢……あるいは
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が率いる騎兵隊は俺の真下を通り過ぎようとしていた。
 その瞬間、湧き上がる鬨の声。

 そして――


☆★☆★☆


 夢の世界よりの帰還。意識がゆっくりと覚醒して行く。
 夢と現実の狭間。その微妙な間をただ漂うかのような感覚。まるで緩やかな流れを漂う木の葉の如きまどろみの時間。温かな布団に包まれた至福の時間帯。
 何時までもこの感覚を味わって居たい。そんな感情に支配される時……。

 しかし――

 呼吸により取り入れる空気が冷たい。しかし、その冷気を肌と咽喉、そして胸の奥でより強く感じる事により、意識が微睡の淵から現実の世界への帰還を促される。
 目蓋の裏に感じるのは黒。ただ、漆黒を示す黒などではなく、僅かな光を感じさせる黒であった。

 但し……。

 但し、其処にほんの少しの違和感。俺は常夜灯すら消して、完全な暗闇の中で就寝する。別に暗闇でなければ寝られない、と言う訳ではないが、小さな頃からの習慣でそう言う風に寝て居た。
 俺に取って闇とは、必要以上に恐れる必要はない物であったから。

 昨夜――。昼間に行われた球技大会決勝は、九回裏ツーアウト満塁から俺の起死回生の逆転満塁ホームランで見事な逆転勝利。その後、祝勝会と言う名目で行われた一年六組有志に因る宴会。一次会から二次会。徐々に人数も減って行き、最終的にSOS団メンバーだけと成りながらも続けられた三次会。
 その後、流石に時間的にも遅いので、……と言う理由から全員が何時も通りに有希の部屋へと泊まる事となり――

 普段の夜と違う周囲の気配。おそらくこれが夜中に目を覚ました最初の要因。
 覚醒したて。未だ現実と夢の狭間で曖昧に……なんと言うか、輪郭の溶けた意識の底、それほど回転が良いとは言えないオツムでそう判断する俺。但し、その中に特別に危険な気配は感じない。そう考えを纏めた後に、ゆっくりと目蓋を開ける。その俺の瞳に映る常夜灯の明かりに照らし出された天井の木目。
 シンプルなカーテンに映るのは室内の常夜灯の明かりのみ。その事から、外界は未だ深い蒼が支配する世界で有る事が理解出来た。

 そうして――

「――有希」


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